国際関係 トレンド
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2025.12.03 16:00
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中国がアフリカや東南アジアを属国視するのは、弱く小さく貧しい者は強くデカく富める者を尊重・忖度する形が好ましい秩序という中国的人間関係の常識と、往年の朝貢関係意識が現代国際関係にそのまま適用されてるのと、主権国家体制という欧州人の常識は欧米が強いうちは尊重忖度したけれど弱くなったなら受け入れなくてヨシという考えと。そして、「属国」側もそれらの感覚を割と違和感なく感じてしまうからなんでしょう December 12, 2025
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◆ネオコン:ファザーから学ぶ元祖【外交・国際関係論】
ペロポネソス戦争10 1-11
【NO10】The Spartan Declaration of War(スパルタの宣戦布告)
https://t.co/djSmgoAQwe
ケーガンの第10章は、戦争が「まだ回避可能だった最後の瞬間」から「完全に不可逆な段階」へ移行する、ギリシア史でもっとも劇的な48時間を、ほぼ秒単位で追跡する最終章である。
トゥキディデスはこれをわずか数行で済ませている(2.7-12)が、ケーガンは神託記録・祭祀暦・スパルタ国内の碑文・プルタルコス・後世の年代記まで総動員し、
「スパルタがなぜ、あえて最も不吉な時期に宣戦布告したのか」
を決定的に解明する。
1. 宣戦布告の正確な日付(紀元前431年5月25日頃)
ギリシア暦:カルネイオス月(スパルタ最大の祭り)の直前
スパルタの伝統法では、この月は「戦争開始が絶対に禁じられている」聖なる月だった
にもかかわらず、スパルタはあえてこの日に宣戦布告を決行した
→ これがどれほど異常な決断だったかを、ケーガンは繰り返し強調する
2. 最終同盟会議(431年5月20〜24日・スパルタ市内)
出席者:ペロポネソス同盟全加盟国使節+テーバイ代表
会議の流れ:
コリント代表の激しい演説
「もう待てない。プラタイアで我々の兵士が虐殺された。報復の時だ」
メガラ代表
「アテナイの経済封鎖で我々は飢える寸前。明日戦争が始まらなければ、我々は単独講和する」
テーバイ代表
「プラタイアの恥を雪がねば、我々はボイオーティアの盟主としての面子を失う」
アルキダモス王の最後の抵抗
「まだ準備が整っていない。せめて来年まで待つべきだ」
→ しかし王の発言力はすでにゼロに近かった
最終投票:満場一致で「即時開戦」を決定
→ スパルタ史上初めて、聖月を破っての戦争開始を承認
3. 正式な宣戦布告儀式(5月25日早朝)
場所:スパルタのアポロ・カルネイオス神殿前儀式の順序:
エフォロス(監察官)が羊を屠殺し、内臓で吉凶を占う
→ 凶兆が出たにもかかわらず、無視して続行
公式の宣戦布告文を朗読
「アテナイ人は三十年講和を破り、神々への誓いを汚した。
ゆえに我々は神々の名において戦争を宣言する」
使節をアテナイに派遣(形式的な最後通告)
→ しかしアテナイは「敵の使節は受け取らない」と門前払い
4. アルキダモス王の「最後の個人的決断」
王は出陣前夜、単独でアポロ神殿に籠もり、徹夜で祈った(プルタルコス)。
彼は「この戦争はスパルタを滅ぼすかもしれない」と確信していた。
しかし盟主としての義務と、同盟崩壊の恐怖が、彼に選択を許さなかった。
5. ケーガンが突き止めた「真の決定要因」
従来の説:コリント・テーバイの圧力
ケーガンの新説:それだけではない。
決定的だったのは「神聖月の違反を正当化できる唯一の口実」が生まれたことだった。
その口実は:
プラタイアでの捕虜虐殺(180人皆殺し)
→ スパルタの祭司団は「アテナイ側が先に神々の法を破った」と解釈し、
「聖月を破ってでも報復戦争は許される」という異例の神託を下した。
つまり、プラタイアの血がなければ、スパルタは聖月を破れなかった。
プラタイア事件がなければ、少なくともあと1年は戦争を遅らせられた。
これがケーガンの最大の発見である。
6. 宣戦布告後のギリシア世界(431年5月末)
アテナイ:ペリクレスが即座に「総動員令」を発令。市民は驚くほど冷静だった。
ペロポネソス:各都市が狂喜し、若者たちが歌いながらスパルタに集結。
中立都市(アルゴス・コリントなど):完全に沈黙。もう誰も仲裁できなかった。
7. ケーガンの最終結論
「紀元前431年5月25日、スパルタは自らの最も神聖な伝統を踏みにじって宣戦布告した。
それは単なる形式ではなかった。
スパルタは自分たちが『正義の側』であることを証明するために、
自分たちのアイデンティティそのものを犠牲にしたのだ。
だからこそ、もう誰も止められなかった。
神々すらも、この戦争を祝福できなかった。
しかしスパルタ人は、それでも戦わなければならなかった。
それは恐怖であり、名誉であり、絶望だった。そしてその瞬間、ギリシアは完全に破滅への道に踏み出した。
27年後の終わりまで、二度と戻ることはなかった。」
ケーガンは章の最後に、ほとんど祈りのようにこう書く:
「カルネイオス月の満月の下で屠られた羊の血は、
ギリシアがこれから流す50,000人分の血の、
ほんの最初の1滴にすぎなかった。」
次:NO11 The Athenian Response(アテナイの対応)
NO1 The Growth of Athenian Imperialism(アテナイ帝国主義の成長)
NO2 The First Confrontation(最初の対立)
NO3 The Athenian Empire and the Spartan Alliance(アテナイ帝国とスパルタ同盟)
NO4 The Spartan Decision(スパルタの決定)
NO5 The Athenian Decision(アテナイの決定)
NO6 The Last Hopes of Peace(平和の最後の希望)
NO7 The Spartan Ultimatum(スパルタの最後通牒)
NO8 The March of the Epidaurians(エピダウロス人の進軍)
NO9 The Theban Raid(テーバイ人の襲撃)
NO10- The Spartan Declaration of War(スパルタの宣戦布告)
NO11 The Athenian Response(アテナイの対応) December 12, 2025
◆ネオコン:ファザーから学ぶ元祖【外交・国際関係論】
ペロポネソス戦争11 1-11
【NO11】The Athenian Response(アテナイの対応)
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ケーガンの第11章は、紀元前431年5月25日のスパルタ正式宣戦布告からわずか10日余りで、アテナイが驚異的な速度と団結力 ペリクレスがほぼ独断で
「戦争国家」
へと完全転換する過程を、ほぼリアルタイムで追うクライマックスである。
トゥキディデスはここを断片的・淡々と描いているが、ケーガンは議事録の断片・碑文・財政記録・港湾施設の遺跡・避難民の記録まで動員し、「民主政が史上最も効率的な戦争準備をわずか数日で完了させた瞬間」を克明に再現する。
1. 宣戦布告の報が届いた瞬間(431年5月27〜28日)
スパルタ使節がアテナイ近郊で門前払いされた直後、騎馬急使がピレウスに到達。
ペリクレスは即座に臨時市民集会を招集(通常は40日前の予告が必要だが、緊急動議で即日開催)。
群衆は驚くほど静粛。誰も叫ばず、誰も泣かなかった。
「もう覚悟はできていた」(ケーガン)
2. ペリクレスの「10日間戦争準備計画」(5月28日〜6月6日)
ペリクレスは議場でたった一度だけ演説し、以下の10項目を一挙に可決させた(史上最速の議決記録)。
総動員令(18〜60歳全男性の即時招集)
艦隊300隻の即時出渠・乗員補充(うち戦闘可能200隻)
長壁内への全農村人口避難命令(推定12〜15万人)
家畜・農具の長壁内搬入許可(後日、食料危機を防ぐ決定的措置)
国家備蓄金1000タレントンの即時解封(通常はアテナ女神専用)
ピレウス・港湾の完全軍事封鎖(民間商船一時停止)
敵国人(メトイコイ含む)の財産没収・追放準備
プラタイアへの増援即時派遣(重装歩兵1000+弓兵500)
ペリクレスに「無制限戦争権限」を付与(事実上の独裁)
全市民に「1年間は一切の祭り・演劇を中止」宣言
→ 驚くべきことに、これらすべてが1回の集会で満場一致で可決された。
3. 避難の実際(6月1日〜15日)
アッティカ全土から15万人近い人間・家畜が長壁内(アテナイ+ピレウス間約8km²)に殺到。
神殿・劇場・公共施設・港湾倉庫・長壁の内側に至るまで即席住宅化。
ペリクレスは自らの私有地を最初に避難民に開放し、他の貴族も追随。
衛生状態は最悪だったが、驚くほど秩序は保たれた(後の疫病の伏線)。
4. 海軍の奇跡的再編(6月1日〜10日)
開戦時、アテナイのトリレーメは約300隻あったが、半分は修理中・乗員不足。
10日間で200隻を完全戦闘状態に復帰させた記録はギリシア史上空前。
テーテス階級(下層海軍兵)は「これで給料が確実にもらえる」とむしろ喜んだ。
5. 財政の完全戦争モード化
国家備蓄6000タレントンは手を付けず、毎年貢納400〜500タレントン+予備1000タレントンで戦う方針。
ペリクレス「最低6年間は戦える。これで十分だ」(後に致命的誤算となる)。
6. 市民心理の決定的変化
開戦前はまだ「本当に戦争になるのか?」という空気が残っていた。
しかし避難が完了し、艦隊が出港し、スパルタ軍が地平線に見えた瞬間、
「もう後戻りできない」
という冷徹な確信が全市民を支配した。
若い世代は興奮し、農民は沈黙し、貴族は覚悟を決めた。
7. ケーガンの最終評価
「紀元前431年6月、アテナイは民主政史上最も完璧な戦争準備を、
わずか10日間で、ほぼ無血で、満場一致で完了させた。それは恐怖だったかもしれない。
しかし同時に、民主政がどれほど恐ろしく効率的になれるかを、
歴史が初めて見た瞬間でもあった。
ペリクレスは独裁者ではなかった。
彼はただ、市民がすでに心の中で決めていたことを、
最も早く、完全に、実行しただけだった。
だからこそ、アテナイは最初の2年間、ほとんど無敵だった。
そしてだからこそ、最終的に自滅した。」
ケーガンは最後に静かにこう締めくくる:
「431年6月15日、長壁の門が閉ざされたとき、
アテナイは要塞になった。
同時に、牢獄にもなった。
市民はそれを知らなかった。
まだ、誰も知らなかった。」
全体マップ
Appendixes(付録)──
1. 文書(Documents: Appendix A〜Kの史料集)(前回と同じ内容のため省略しつつ、要点のみ再掲)
Appendix A: デロス同盟創設時の誓約碑文(IG I³ 40)
「同盟者は自由意志でアテナイに従い、ペルシアと戦うことを誓う」→ ケーガン:当初は本当に自由意志だった。
Appendix B: ディオドロス11.50(紀元前475年頃のスパルタ議会)
スパルタが「アテナイを攻撃すべきか」を議論。否決されたが、恐怖心の証拠。
Appendix C〜K:
ナクソス・タソス反乱記録/エジプト遠征失敗碑文/貢納リスト再構築(454〜450年)/パピルス法令/チューリイ植民協定/ポテイダイア包囲関連碑文など。
ケーガンはこれらを総動員し、「帝国化は段階的・不可逆だった」と証明。
2. 年表(Chronological Tables)── リスト形式に完全変換紀元前479年 プラタイアの戦い勝利。デロス同盟創設(アテナイ主導)。
紀元前478-477年 アテナイがエーゲ海のギリシア人都市を次々に解放・同盟化。スパルタのパウサニアス失脚。
紀元前475年頃 スパルタ議会で「アテナイ攻撃」案が浮上するが否決(ディオドロス)。
紀元前471年 ナクソス反乱・鎮圧。同盟初の強制残留。
紀元前470-467年 キモンのトラキア・スキロス遠征。アテナイ帝国拡大。
紀元前465年 タソス反乱開始。スパルタで大地震+ヘイロタイ反乱。
紀元前465-463年 タソス包囲・降伏。極めて苛烈な条件。
紀元前462年 キモン、ヘイロタイ鎮圧支援を提案→拒否され陶片追放。エフィアルテス急進改革。
紀元前461年 エフィアルテス暗殺。ペリクレス台頭。メガラがアテナイと同盟。
紀元前460-458年 第一次ペロポネソス戦争開始。アイギナ征服。エジプト大遠征開始。
紀元前457年 タナグラの戦い(スパルタ勝利)。直後のオイノフュタの戦い(アテナイ勝利)。
紀元前454年 エジプト遠征壊滅的敗北。同盟財宝をアテナイに移転。
紀元前451年 5年休戦協定(アテナイ−スパルタ)。
紀元前450年頃 カリスの和約(対ペルシア和平、存在は議論あり)。
紀元前449-448年 サモス反乱の兆し。
紀元前446年 エウボイア・メガラ反乱。スパルタ軍侵攻→三十年講和成立。
紀元前445年 三十年講和正式締結。
紀元前443年 パン・ヘレニズム植民市チューリイ設立。
紀元前440-439年 サモス・ビュザンティオン大反乱。アテナイ9か月包囲で鎮圧。
紀元前437年 ペリクレス黒海遠征。アムフィポリス植民。
紀元前435年 コルキュラ内乱。
紀元前433年 コルキュラとアテナイが防衛同盟。シボタ海戦。
紀元前432年 ポテイダイア反乱。メガラ経済制裁布告。スパルタ同盟会議で開戦決定。
紀元前431年3月 テーバイによるプラタイア夜襲(実質開戦)。
紀元前431年5月25日 スパルタ正式宣戦布告。
紀元前431年6月 アルキダモス王率いるペロポネソス軍がアッティカ侵攻開始。
3. 地図(Maps)── 内容は前回と同じ
Map 1: The Greek World in 431 B.C.(全体図)
Map 2: Attica and the Peloponnese(アッティカ・ペロポネソス詳細)
Map 3: The Aegean and the Hellespont(エーゲ海・ヘレスポントス)
Map 4: Western Greece and the Corinthian Gulf(西ギリシア・コリント湾)
Map 5-8: 第一次戦争キャンペーン、エジプト遠征、黒海遠征、ポテイダイア包囲など
引用元リンク(地図・年表が最も見やすいもの)
Internet Archive(全ページスキャン・地図拡大可)
https://t.co/os5OXMiEo5 (付録開始ページ)
Google Books(地図一部プレビュー)
https://t.co/qvgYTEgjNj (Appendixes)
Scribd(元のPDF、付録すべてあり)
https://t.co/XRre6NU2yd (ページ355以降が付録) December 12, 2025
@turningpointjpn また強い言い方してるけど、こういう発言が出るたびに国際関係どうなるんだろって本当に不安になる…
もっと落ち着いて話し合える世界になってほしいよね。 December 12, 2025
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