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2025.12.07 06:00
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学校にノートPCやタブレットを入れれば、子どもたちの学力は上がるはず。多くの国がそう信じて、巨額の予算を投じてきました。
ところが、国際調査のデータを丁寧に見ると、かなり違う姿が見えてきます。
OECDのPISA調査を分析した報告書では、学校でコンピュータをほどほどに使う生徒は成績がやや良いものの、授業でとても頻繁に使う生徒は、家庭の経済状況などを補正しても、読解や数学で成績が低くなる傾向があるとされています。各国が教育ICTに投資してきたにもかかわらず、平均点は劇的には上がっていません。
大学の実験研究では、授業中のノートPC利用を認めたクラスは、紙とペンだけのクラスに比べて、期末試験の点数が平均で約0.2標準偏差分低くなりました。数字だけ見ると地味ですが、クラス全体の理解度が目に見えて落ちるレベルの差です。
ノートの取り方を比較した研究では、ノートPCで講義を記録した学生よりも、手書きでノートを取った学生の方が、応用問題や概念理解の問題で成績が良くなるという結果が繰り返し報告されています。タイピングだと、話された内容をそのまま写す作業になりやすく、自分の言葉に整理し直す「頭を使う時間」が減ってしまうためです。
読書についても、情報文やテスト形式の文章では、紙の本を読んだ方が、画面で読んだ場合よりも理解度が高いというメタ分析が複数あります。特に時間制限がある時や、説明的な文章では、紙の優位性がはっきり出るとする報告もあります。一方で、物語をじっくり読む場面などでは差が小さいなど、条件によって結果が変わることもわかっています。
では、デジタルは全てやめるべきなのでしょうか。
必ずしもそうではありません。恵まれない子どもたちを対象とした最新の分析では、よく設計された教育用ソフトや、保護者へのメッセージ配信など行動を後押しするデジタル介入は、小さいながらも確かな学力向上効果があるとされています。ただ端末を配るだけではなく、学び方そのものを支える仕組みとして組み込んだ時にだけ、意味のある効果が見えているのです。
各国の政策も揺れています。授業中のスマホ利用を禁じた国や地域では、集中力や教室の雰囲気が良くなったという報告がある一方で、成績やメンタルヘルスの改善は限定的だとする研究もあります。結局のところ、「何のために」「どの時間帯に」「どの科目で」端末を使うのかという設計を抜きに、単純な是非だけを議論しても、あまり意味がないのかもしれません。
いま見えているエビデンスを乱暴にまとめると、次のようになります。
紙とペンでじっくり考える時間を削ってまで、常時画面を開いておくメリットは小さい。
一方で、目的を絞り込んだデジタル活用は、特に不利な立場の子どもたちにとって、学びを支える道具になり得る。
だからこそ、本当に問うべきは「端末を導入するかどうか」ではなく、
どの教科や場面を紙中心に戻すのか。
授業中の端末利用をどこまで制限するのか。
誰に、どんな支援付きでデジタル教材を提供するのか。
といった具体的な設計です。
子どもの脳を守るか、それとも画面を守るか。
私たち大人に突きつけられているのは、その選択だと思います。 December 12, 2025
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