前の職場に、部署の全員から嫌われてる上司がいた。

・怒鳴る
・詰める
・人前で平気で叱る
・期限だけ押し付ける

正直、誰も近づきたがらなかった。
私もその一人だった。

新プロジェクトのキックオフ。
上司はいつものように言い放った。

「このタスク、全部今日中にやれ」

空気が凍った。
誰も返事をしない。

そのあと人事の部長がそっと課長を呼び出した。
「ちょっと来て」

数分後。
戻ってきた上司の顔を見て、私は息をのんだ。

怒りでも苛立ちでもない。
…明らかに落ち込んでいた。

翌日、まるで別人になってた。

朝のミーティング。
いつもは命令口調なのに、課長は深く頭を下げた。

「昨日はすまなかった。期限、無理に詰めすぎてた。今日は優先順位を一緒に決めさせてほしい。」

誰も最初は信じられなかった。
でもその後も続いた。

・怒鳴らない
・人前で叱らない
・タスクの背景を説明する
・人の話を途中で遮らない
・「ありがとう」が増えた

嘘みたいに変わっていった。

「課長、何があったんですか？」
課長は少しだけ苦笑した。

「人事からデータを見せられたんだ。
あなたの下だけ離職率が異常に高いって。」

課長は続けた。
「俺は数字を出してるつもりだったけど、
実際は人を失ってたんだよ。」

嫌われていた上司が変わった理由は、
怒り続けたからでも部下が耐えたからでもない。

失敗と向き合ったから人が戻ってきただけ。

上司もただの一人の人間で、間違えるし、迷うし、不器用にしか変われない。

でも人は変わらないんじゃない。
変わる理由を知らないだけ。 December 12, 2025