上柳昌彦 あさぼらけ ラジオ
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2025.11.22 20:00
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遺失物の碧
ベンチに落ちていたバナナを食べたらバナナはなくなってベンチはあるけれどもバナナは忘れ物なのか落とし物なのか見つけた人への奉仕なのかわからないと老婆は話し食べたのは誰かもわからないけれどもわたしかもしれないいまはもう覚えてはいないけれどもただバナナのそばには碧があったからバナナもあったのだろう空と会話する今日の会話は食べてしまったと笑う
碧は喩えとしてそこにあればいい
無くてもいい
頼りない記憶の
中身をならべる財布と水とチョコと本を置きいくつかビターをかじり訪れるあさぼらけ広々とした公園の芝生ですれ違う老婆の動く唇の奥から渇きの声が薄い雲の切れ目に忍び込む失ったのか盗んだのかの境目を
開けたら膨れる水を水面に似た唇に溶かし与え笑みこぼれ流れ落ちかけらを手渡せばかけらは体温だけで瞬く間に消えビターの味さえ滅亡する
老婆の細くて鋭い爪が見え隠れの財布に触れる物忘れと盗みの意味を保留にして似非牛革の財布はくたびれあちこち破れ大小様々な穴々から雑草が生え引き抜くのは困難の極みカモフラージュの標本になる
軟体動物でもある本を読むうちに読めない箇所に行き当たり老婆を見遣れば先へ先へと読みすすみ物語の起伏が顔や手の皺になる
物語になった老婆は沈黙のなかの様々な音や声を拾い身をよじって収縮しながらも文字の面を闊歩し小さくて見えなくなる前に本をかろうじて宇の隅から回収する
警官の制服を着た警官がうろうろ述語のないベンチに同じ碧を置いたかに見えるのは同じであり同じではない二つが並ぶ隙間から現れる盗まれた主語を見つけるためではなく偶然であれここに二つあることの契機とも気づかないようなそれでいて驚きの
唐突に現れなにを失ったのか誤謬にもなる夕暮れの碧を老婆は肩にかけ軽やかな動きで何事もなかったかのように遠ざかる水のように文字のように笑むあざやかな一日の終わりに類して散らばりゆるく凝るわずかに離れていても
今日もベンチにはバナナが落ちている林檎もある林檎の話は明日の会話だから今日のことはもうなにも覚えてはいないけれども明日のことははっきり覚えていると老婆は警官の制服を着た警官に挨拶する
#詩 338/2025.11.22/X
Santa Maria degli Angeli e dei Martiri Roma
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上柳です。ブログ「ラジオの人」更新です。「笑福亭鶴瓶 2025落語会」in浅草公会堂 行って来ました!の回てす。なんだか涙もろくなってしまっている私なんですよ。 https://t.co/eqcMhKTgrX #あさぼらけ #笑福亭鶴瓶 #上柳昌彦 #ニッポン放送 November 11, 2025
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