若い人のほうがポテンシャルという意味で優れているのは事実だし、会社が成長すればするほど、後から入ってくる人材のレベルが上がっていくのも自然な流れだと思う。環境が整い、実績ができ、選択肢が増えた状態で入社する人のほうが、能力や経験値が高いのはむしろ健全。だから、組織に新陳代謝が起きること自体は悪いことじゃない。

ついてこられなくなった人が自然と入れ替わっていくのは、成長企業にとって避けられない現象でもある。それでも、今より何も整っていなかった時代に、環境も実績もない中で飛び込んでくれて、一緒に会社をつくろうとしてくれたメンバーを「合理性」だけで切り捨てるのは違うと思っている。

あの時代にリスクを取り、時間と労力を差し出してくれた事実には、数字では測れない価値がある。経営とは効率や最適化のゲームである一方で、人の人生を預かる行為でもある。もちろん、本人がもう諦めているなら、無理に引き止めることはできない。成長する意思がなく、挑戦から降りてしまった人を引っ張ることは、本人にとっても組織にとっても不幸なこと。

ただ、まだ灯火が消えていないなら、まだ前に進みたいと思っているなら、経営者としてできることはやりたい。育成するのか、役割を再定義するのか、期待値を調整するのか。方法はいくらでもある。会社が強くなる過程では、どうしても「ついていける人」と「苦しくなる人」が生まれる。その現実から目を逸らすつもりはない。

ただ、合理性だけで判断する経営は簡単だが、それだけでは強い組織にはならない。過去に賭けてくれた人の可能性を、最後まで信じようとする姿勢が、組織の背骨になる。最終的に残るのは、環境でも肩書きでもなく「この会社は人を簡単に見捨てない」という空気。灯が消えるまで見捨てない経営者でありたい。 December 12, 2025