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2025.12.12 06:00
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文化放送サテライト広場
ライブありがとさまでした✨
ここで白衣装着るの珍しかったよねっ
みんなに可愛いって沢山言ってもらえて嬉しかったなり😼🤍 https://t.co/gE2zkk6by5 December 12, 2025
幽閉サテライトをこれからも応援して頂ければ幸いです。
卒業の度に心配して下さる方もいらっしゃいますが、まずはshinmaのこれからの新しい道を温かく見送っていただければと思います。
そしてこれからの幽閉も変わらず見守って頂ければ嬉しく思います。
─15年間幽閉の曲を作り続けてきた者より─ December 12, 2025
今回は「牛歩」についてまとめました。
1.戦略としての意図と有効性
牛歩戦術の主な意図は、トーナメントで一手でも長く生き残ることです。特にバブルライン(入賞目前)や大きなペイジャンプ直前では、プレイヤーは一人でも多く他者が先に脱落することを願います。
そのため、自分の番で考慮時間ギリギリまで使って(実際のアクションはフォールド一択であっても)、1ハンドごとの消化に時間をかけ、ゲーム進行を意図的に遅らせます。その間に他卓で誰かがバストしてくれれば、自分はリスクを取らずに生き残ることができる、という構図です。
たとえば、「残り入賞まで1人」「自分のスタックは数BB」という状況なら、例え弱いハンドでもすぐフォールドせずに演技しつつ粘ることが合理的になります。このように各ハンドの消化を遅くすれば、他卓より自卓のハンド数を減らせるため、その間に他の誰かがバストすれば自分はリスクを取らずに生き残る可能性が上がります。
この戦術には、少なくとも次の2つの「有効性」があります。
・自然死リスクの低下
ハンド数が減れば、オールイン勝負を強いられる回数も減ります。同時に、ブラインドが自分に回ってくるペースも遅くなるため、ブラインドに削られてチップが尽きるリスクが下がります。オールインを1回減らせるだけでも、その間に他テーブルで誰かが脱落する確率は上がるため、期待値的には決して小さくありません。
・テーブル間の進行速度の非同期を利用できる
マルチテーブルトーナメントでは、全卓が全く同じペースで進行することはほぼありません。「同じ時間でも消化ハンド数が違う」状況は普通に起こります。牛歩によって自卓だけゲーム数を少なく抑えられれば、他卓と比べて相対的にオールインリスクを回避できる構造になります。
戦略的な観点から見ると、これは「賞金期待値(EV)を上げる手段」として一定の合理性があります。入賞直前やファイナルテーブル手前など、残り人数が1人減るごとに自分のEVが大きく跳ね上がる局面では、「自分の卓だけポンポンとハンドが進み、他卓がゆっくりしている」状況は大きな損失になり得ます。逆に自卓の進行を遅らせている間に他卓で誰かが飛べば、自分はほとんど何もせずにEVを上乗せできてしまいます。
ICM理論の観点からも、賞金分配が絡む局面では「与えられた持ち時間をフルに使って生存確率を最大化する」ことは、机上では「正しい選択」と解釈されます。
実際の事例として、2025年WSOPメインイベントでプロのアイザック・ハクストンが見せた超タンクが報じられています(※1)。ハクストンはオールイン寸前で1枚だけチップを残すラインを選び、その後約6分間の長考を続けました。かなり極端な例ではありますが、「トッププロですら、短期的な生存と賞金確保のためにタンクを活用する場面がある」ということを象徴するケースです。
2.メリットとデメリット
牛歩戦術には、プレイヤー本人にとってのメリットと、ゲーム全体に対するデメリットの両方が存在します。
①メリット(戦略的利点)
最大の利点は、バブルラインでの生存率を高め、賞金獲得やペイジャンプ到達の期待値を上げられることです。自分のスタックが瀕死状態のとき、無理な勝負をして飛ぶくらいなら、時間を引き延ばしてでも入賞圏内に滑り込む方が得策、という状況は実際に存在します。
・オールイン回数を減らす
・ブラインドに削られるスピードを抑える
ことで得られる「生存の恩恵」は、決して小さくありません。短期的に見れば、牛歩によって数BB分のEVを稼ぐことも十分可能であり、「ルール上許された時間を使い切るのは当然の自己防衛策だ」という考えも成り立ちます。
また、「テーブル間の不公平を是正する手段」として捉える立場もあります。自分の卓だけハンド消化が速いと不利を被るため、「だったらこちらも遅くして対抗する」のは公平だ、という理屈です。
②デメリット(悪影響)
一方で牛歩は、ゲームの流れを極端に滞らせ、他の参加者全員にストレスと負担を与える行為でもあります。
・一人が長考を繰り返せば、その卓の全員(プレイヤー、ディーラー、フロアスタッフ)がそれに付き合わされる
・ライブ会場では、観客や他テーブルのプレイヤーまで「待ち時間」を強いられる
結果として「バブルがとにかく長引いて疲れる」「同卓にあの人がいると本当にしんどい」といった悪評が広まりやすくなります。特に趣味で参加するレクリエーショナル層は嫌気がさし、離脱してしまうリスクがあります。短期的に得た数BB分の利益があったとしても、長期的には「トーナメント自体の魅力低下 → 参加者減少 → 全体の賞金規模縮小」という形で、自分の期待値も間接的に削られかねません。
③他プレイヤーや運営への影響
牛歩が横行すると、同卓の他プレイヤーも「自分だけ損をしたくない」という心理から、便乗して遅延行為に走る可能性があります。
「1人が牛歩を始める → 他のショートも真似して粘る → 卓全体がどんどん遅くなる」
という伝染は、ライブの現場でよく起こります。
その結果、
・その卓の進行はさらに遅延
・ディーラーは同じハンドに長時間拘束される
・TDは全体の進行管理が難しくなる
運営側にとっても牛歩は頭痛のタネであり、深刻な場合はタイムスケジュールが押してイベント運営そのものに支障をきたします。
3.マナーやエチケット上の評価
牛歩はマナー・スポーツマンシップの観点からもしばしば批判の対象になります。多くのプロや観戦者は、あからさまな遅延行為に対して「フェアじゃない」「みっともない」とネガティブな印象を抱きます。
2025年WSOPメインイベントのバブル付近でも、あるビッグスタックのプレイヤーが、牛歩していたショートスタックに対し「それは倫理的に良くない」と苦言を呈し、言われた側が「あなたも自分がショートならやるだろう?」と応酬する場面がありました。口論はヒートアップし、最終的にはフロアスタッフが仲裁に入る事態にまで発展しています(※2)。
プロプレイヤーの見解も様々ですが、近年は批判派の声も強まっています。例えば高額トーナメントで活躍するジェームズ・チェンは、「遅延行為はイカサマだ」とまで言い切り、故意の牛歩はルール違反として断じて許されないという立場を表明しました(※3)。一方で、「牛歩も戦略のうち」「許された持ち時間を使うのは権利」と主張するプレイヤーも根強く存在し、肯定派 vs 否定派の議論はSNSやインタビューなどで繰り返されています。
観戦者やメディアの印象も、総じて否定的です。テレビ中継やライブ配信では、長々とした牛歩は視聴体験を損ねるため嫌われますし、新規プレイヤーの参入意欲を削ぐ面も指摘されています。
WSOP2025メインイベントでは、ウィリアム・カソフ(Kassouf)が過度なスロープレーとおしゃべりで物議を醸し、他のプレイヤーや観客の反感を買いました。テーブルトークと同時に毎回タンクする戦術で周囲を苛立たせ、最終的に大会側から複数回のペナルティを受けています(※4)。
この件は当時大きな議論を呼び、「規定に明文化されていない迷惑行為への対処」という課題を突きつけました。カソフのケースでは失礼な発言(過度のチャター)も問題でしたが、根底には「ルールの抜け穴を突いた遅延戦術をどう規制するか」というテーマがあります。以後、プロの間でもルール改正を求める声が強まりました。
まとめると、牛歩はマナー・倫理面で賛否が大きく分かれる行為であり、
「勝負のためには許容される戦術」
と見る立場と、
「ゲームの品位と公正さを損なう悪習」
と見る立場が真っ向から対立しています。
4.TDAルールと運営側の対応
大会ルール上、牛歩(極端な遅延プレー)は明確に禁止または制限されています。ただし、その適用は必ずしも白黒はっきりしておらず、グレーゾーンも存在します。
トーナメントディレクターズアソシエーション(TDA)の規定では(※5)、
・プレイヤーはゲームの円滑な進行のため「タイムリーに行動すべき」
・「持続的なゲームの遅延」はエチケット違反の一例
とされています。TDAルール70では「繰り返しゲーム進行を遅らせる行為」はペナルティの対象となり得ると明記されており、悪質な場合は警告、本ハンド数の出場停止、一時的な失格処分などがTDの裁量で科されます。
重要なのは、ルールが禁じているのは「明らかに意図的かつ持続的な遅延行為」であり、単発の長考そのものを即座に反則扱いしているわけではないという点です。プレイヤーが本当に悩ましい局面で時間を使っているのか、単なる時間稼ぎなのかを完全に見極めることは難しく、基本的には各プレイヤーに与えられたショットクロック(持ち時間)やタイムバンクを使う権利は尊重されます。そのためTDも線引きには慎重で、まずは口頭注意やクロックの宣告を促すなど、段階的な対応が一般的です。
ダニエル・ネグラーノは自身のブログでTDAへの提案として、「TDがプレイヤーの行為やプレースピードを見てゲーム進行を妨げていると判断した場合、まず警告し、それでも改善がなければペナルティを科す」という包括的な裁量ルールを導入すべきだと主張しています(※6)。
運営側の具体的な対応策として代表的なのが、「クロック制度」と「ハンド・フォー・ハンド(H4H)方式」です。
・クロック制度
WSOPをはじめ多くの大会では、ある程度時間が経過して明らかに遅い場合、他のプレイヤーが「クロック」と宣言する権利があります。TDあるいはディーラーがこれを認めると、その時点からカウントダウン(例:30秒+5秒カウント)を行い、時間切れになればそのプレイヤーのハンドはデッド(フォールド)となります。
これは、プレイヤー同士が互いに牽制し合う仕組みで、あまりに露骨に遅い場合に周囲が圧力をかけるための手段です。前述のハクストンの例でも、最終的には同卓プレイヤーが業を煮やしてクロックを要求し、6分以上に及んだ長考が強制終了させられました。
もっとも、全員が賞金に敏感になるバブル付近では、周囲もショートに同情してなかなかクロックをコールしない雰囲気もあり、クロック制度だけで牛歩問題を根絶するのは難しいのが現状です。
・ハンド・フォー・ハンド(H4H)
入賞まで残り数名(一般的には残り人数=入賞枠+1程度)になった段階で、全テーブルの進行を同期させる方法です。「現在のハンドが終了したらH4Hに移行します」とアナウンスされて以降は、全卓が1ハンド終わるごとに、同時に次のハンドへ進みます。
誰かが飛ぶまでこの同期進行が続くため、ある卓で極端なタンクがあっても、他卓だけ先にどんどん進むことはありません。テーブル間のハンド数のズレが解消されることで、「自分の卓だけ先に多くプレイして不利を被る」という不満は和らぎます。
ただし、H4H下でも「誰かが極端にタンクすると全員が付き合わされる」という構図そのものは変わりません。言い換えれば、「牛歩によるコストをフィールド全員で割り勘している」状態です。それでも不公平感が大きく緩和されるため、現在では広く採用されています。
そのほか、ショットクロック(各アクションに一律の持ち時間+タイムバンクを設定する方式)もWPTやハイローラー帯を中心に普及しつつあります。これは物理的に極端なタンクを不可能にする仕組みで、「考えすぎによるゲーム停滞」を嫌うフィールドでは支持が強い一方、大規模トーナメントではコスト面などからまだ普及途上です。
TDAも「各会場で創意工夫により遅延抑制策を講じるべき」としており、
・レベルごとに時間ではなく「固定ハンド数」で区切る方式
・オービットフォーオービット(各卓で1周プレイごとに進行を合わせる)
・ソフトハンドフォーハンド(早めにH4Hに近い状態を作る)
など、様々な案が検討されています。
重要なのは、「牛歩=常に持続的遅延=即反則」と一括りにされているわけではない、という現実です。
たとえば、
・3時間毎ハンド牛歩する常習者
・バブルの数ハンドだけ粘ったプレイヤー
この2者では悪質性が全く異なるため、現場では「度を越した常習者には厳しく、限定的なタンクには比較的寛容」というスタンスが取られています。
5.ICM理論との関連
牛歩戦術を語る上で欠かせないのが、ICM(Independent Chip Model)理論との関連です。
ICM理論とは、トーナメントにおけるチップ量と賞金期待値の関係を数理的に評価するモデルで、ざっくり言えば「現在持っているチップが最終的な賞金期待値にどれだけ寄与するか」を算出する考え方です。トーナメントでは残り人数や賞金配分によって、1点のチップの価値が状況次第で大きく変化します。特に、バブル直前やファイナルテーブル直前など、「脱落者が出るごとに飛躍的に賞金期待値が上がるゾーン」では、ICM的に「リスクを取らず生き残る価値」が非常に大きくなります。
たとえば、入賞ライン目前で自分のスタックが極端なショート(5BB以下など)だった場合、
・オールインしてスタックを倍にできる期待値
よりも、
・無理せず1人飛ぶのを待ってミニマムキャッシュ(最低賞金)を得る期待値
の方が高い、ということは往々にして起こります。
ICM上、自分のチップ量が少なければ少ないほど「次の脱落者にならないこと(=他の誰かが先に飛ぶこと)」の価値が相対的に高くなります。そのため、「自分の卓の進行を遅らせ、その間に他卓で誰かが飛ぶのを待つ」という牛歩戦術には、一定の数学的裏付けがあることになります。
特に顕著なのがサテライトトーナメントや、一部上位のみ賞金が極端に厚い構造のトーナメントです。サテライトでは、一定人数までは同額のチケット獲得、それ以下はゼロという構造なので、入賞ラインでは誰もチップを増やそうとせず、フォールドと牛歩の応酬になることすらあります。
通常のMTTでも、ファイナルテーブル直前(残り10人で9人入賞)などでは、ショートスタックは無理に動かず、隣の卓の脱落を願う場面が典型例でしょう。場合によっては、非常に強いハンドですらICM上フォールドすべきケースもあります。2024年WSOPメインイベントのセミFTで、ジョナサン・タマヨがリップリーダーのオープンに対してQQをフォールドしたシーンは、その象徴的な例としてしばしば語られます。「入賞(あるいはペイジャンプ)を確実にするためには、どんなハンドでもフォールドし得る」というICMの発想が、極端な形で表れた判断でした。
もっとも、ICMはあくまで数理モデルであり、現実のプレイヤー心理や将来的な展開、フィールド全体のスキルなどまでは完全には織り込めません。牛歩し過ぎた結果、入賞はしたものの瀕死の状態でその後すぐ飛んでしまっては本末転倒ですし、H4H移行後は前述の通り全卓が同期するため、いくら粘っても「他卓より得をする」ことはできません。
むしろ「H4H開始までに、少しでも多くスタックを残しておく」ことの方が重要であり、
・どのタイミングまで牛歩で凌ぐか
・どこから通常運転に切り替えるか
その見極めには、相応の技術と経験が求められます。
総じて言えば、ICM理論は牛歩に一定の数学的支えを与えるものであり、それゆえに多くのプレイヤーが「EV的に正しいなら仕方ない」と感じてしまう根拠にもなっています。
なお、WSOPメインイベントのバブルは毎年メディアに実況されますが、2025年は特に異例のバブル賞(WSOPパラダイス大会へのkシート)が設定されたこともあり、ショートスタックがより粘りを見せ、約3時間もバブルが続く展開となりました。観客からすれば手に汗握る瞬間である一方、実際にプレーしている人々には長時間の神経戦でもあり、「まだ終わらないのか」という声も外野から上がったのは事実です。
6.「牛歩への反応」がプレイヤーの成熟度を映す
ここからが、このコラムで特に強調したいポイントです。
牛歩そのものの善悪以上に重要なのは、「他人の牛歩をどう「受け取るか」が、そのプレイヤーの成熟度を映す」という視点です。
同じ状況・同じタンクを見ても、ある人は苛立ち、ある人は笑い、ある人は何も気にせず自分の戦略に集中しています。
その違いには、倭国人特有の文化的背景や、インフルエンサーの影響、海外経験の有無などが影響していると考えます。
ここでは、牛歩へのスタンスを大きく4タイプに分けてみます。
①牛歩そのものに嫌悪するタイプ
特徴
・周囲のテンポや空気を重視する
・ポーカーを「対人ゲーム」として認識し、マナーや和を大切にする
・牛歩=ゲームの進行を妨げる迷惑行為、と捉えている
文化背景
・倭国社会に根付いた「和を以て貴しとなす」的な価値観
・「目立つ」「協調を乱す」行為を避ける傾向
・部活や会社で「空気を読め」「みんな同じように」という圧力に慣れている
このタイプは、「牛歩を見て感情が揺れる」段階と言えます。
イライラし、相手を責め、結果として自分の判断も乱れるという意味では、牛歩に一番「影響を受けてしまっている」層とも言えます。
②ヨコサワ的価値観に影響されたタイプ
特徴
・牛歩を戦略というより「スマートじゃない」「ダサい」と捉える
・YouTubeやSNSからポーカーを学んだ層に多く、スタイル志向が強い
・エンタメ的な視点でポーカーを楽しみ、「テンポよく楽しく」を重視
文化背景
・ポーカーバブル以降の世代で、情報源はインフルエンサーや配信が中心
・「勝つ」ことに加え、「映える」「共感される」ことにも敏感
・世界のヨコサワ氏など、テンポの良いプレーや視聴体験を意識した発信の影響を受けている
③「場合によって有効」と捉えるタイプ
特徴
・インマネバブルや大きなペイジャンプ直前など、局面次第では時間を使うのは当然と捉えている
・他者の牛歩にも過剰に反応せず、「自分のEVが減らない範囲ならOK」と合理的に考える
・クロック要求/クロックをかけられることも含めて「ゲームの一部」として扱える
文化背景
・海外トーナメント経験者や、海外配信をよく見る層に多い
・文化的に「個人の自由」や「勝利のための戦略」を尊重する価値観をある程度取り入れている
④牛歩を意図的に「武器」として使うタイプ
特徴
・ICM圧やバブル時の時間稼ぎなど、戦術として演出も含めて使いこなす
・他者の反応も観察し、自分への印象操作やメンタルダメージとして活用する
・牛歩によって、ティルトしやすい相手を意図的に揺さぶることまで視野に入れている
文化背景
・グローバルスタンダードなポーカーマインド
・「ルールの範囲内でEVを最大化する」ことに非常にストイック
・倭国的な「空気を読む」価値観から、意識的に距離を置いている
なお、ここで強調したいのは、「④が偉くて①がダメ」という話ではない、ということです。
・タイプ①の価値観(和・マナー重視)は、倭国の文化として尊重されるべき側面も大きい
・タイプ②の「スマートで楽しいポーカー」は、業界の裾野を広げるうえで非常に重要
・タイプ③~④は、「EVを最大化する」ことへのコミットメントが強い層
自分がどこにいて、どこを目指したいのか。
そして、他人の牛歩を見たとき「自分はどう反応しているのか」。
それを一度メタ認知してみると、ポーカープレイヤーとしての今の自分がクリアに見えてくるかもしれません。
7.それでも「あえて牛歩を武器として使いたい」なら
ここまで読んだうえでもなお
「賛否あるのは分かる。それでも、ルールの範囲内でEVを取れるなら”武器としての牛歩”も選択肢として持っておきたい」
というプレイヤーもいるはずです。
その前提に立つなら、最低限押さえておきたい原則と、代表的な実戦シーンを整理しておきます。
①武器として使うための大原則
大前提は、次の4つです。
・原則1:TDAルールとハウスルールの範囲から出ない
「常習的な遅延」はルール違反ですし、TDの裁量で一気にペナルティまで飛びます。
「たまに」「ここぞの場面だけ」に絞ることは必須条件です。
・原則2:EVが大きいスポットだけで使う
インマネバブル、明確な大きなペイジャンプ直前、サテライトの残り人数など、「1分=数百~数千ドル相当の価値がある」場面以外で多用するのは、割に合いません。
・原則3:周囲の感情を読んだうえでやる
「毎ハンド2分タンク」など、テーブル全員を敵に回すような使い方は明らかにEVマイナスです。クロックを連発でかけられ、TDにもマークされます。
・原則4:「クロックをかけられる」「注意される」こともセットで受け入れる
クロックをコールされてもキレず、「はい分かりました」と淡々と対応できるかどうか。ここに“武器として使う資格”が出ます。
この4つをふまえたうえで、それでも「ここは時間を使った方が明らかにEV」と思える場面だけピンポイントで使うことが、武器としての牛歩の基本的なスタンスです。
②代表的な3つの「武器としての牛歩」シーン
ここからは、実戦でよくある具体的な3つのシーンと、アクション・意図・心理効果を整理します。
■シーン1:インマネバブル/プライズアップ直前での「時間稼ぎフォールド」
状況
・入賞直前、あるいは明確なペイジャンプ直前
・自分のハンドは明確にフォールドすべき弱いハンド
・他テーブルにはショートスタックがいて、いつ飛んでもおかしくない状況
アクション
・すぐにカードを捨てず、「うーん…」と考えているフリをしながら、1アクションで使える最大限の時間を使う
・クロックをかけられるギリギリ手前でフォールドする
意図・心理効果
・1分~数十秒の「時間投資」で、他卓のオールイン→バストを待つ
・特にITMバブルでは、「1人の脱落=賞金獲得」の境目となるため、1アクションが数百〜数千ドル相当の期待値に直結することもある
・自分は一切リスクを取らずにEVを積める
・あくまで「自然な長考」に収めれば、周囲のヘイトも最小限にしやすい
■シーン2:プリフロップでの「1枚残し+ギリギリコール」
状況
・インマネバブル、ペイジャンプ直前、FTバブルなど
・自分がレイズ(あるいはほぼオールイン)し、1枚だけチップを残す形でベット
・後ろからオールインが返ってきて、「残り1枚を入れるかどうか」という状況
アクション
・残り1枚を入れるか入れないかだけの、形式的には極めてシンプルな場面
・そこであえてタンクし、クロックをかけられるギリギリまで時間を使ってから最後にチップを入れる(またはフォールド)
意図・心理効果
・数十秒~1分遅らせるだけで、他卓のバストやプライズジャンプが先に起きる可能性がある
・周囲のプレイヤーに「なんでそんなに悩むの?」という違和感とストレスを与え、集中力やテンポを崩す副次効果
・自分のハンドレンジへの誤解を誘発できる(本当はスナップコール級なのに、わざと悩むことで“弱いのか?”と思わせる等)
■シーン3:新規着席プレイヤーの「ブラインド免除」を防ぐための牛歩
状況
・現在のハンドで、自分はUTGなどのアーリーポジション
・BBはすでにアクティブなプレイヤーが座っている
・自分とBBの間に空席が1~2席あり、そこにすぐ他卓からの移動プレイヤーが来そう
・「今のハンド中」に着席すれば、次ハンドでそのプレイヤーがBBを支払う
・逆に、今のハンド終了後に着席されると、BBを一周スキップされる
アクション
・ディーラーやフロアの様子を見ながら、プリフロで少し長めに時間を使い、“座る時間”を稼ぐ
・移動プレイヤーが着席してディーラーが「次ハンドから参加OK」と宣言したことを確認してからアクションを完了する
意図・心理効果
・本来支払うべきブラインドを“無料で一周プレーする”ことを防ぎ、公平性を担保する
・自分を含めたテーブル全体のEVを守る行為とも言える
・一見「牛歩」だが、「ルールの穴で得をさせないための時間調整」という側面が強く、むしろ同卓者にも合理的なケース
このケースは、「誰かを苦しめるための牛歩」というより、「全員にとっての不公平を避けるための時間調整」に近いです。ただ、やりすぎれば当然TDから注意が入るので、必要最小限の時間に留めることが前提になります。
8.まとめ
最後に、このコラムのポイントを整理しておきます。
・牛歩は、ICMやテーブル間の進行差を利用して「生存率と賞金EVをわずかに上げる」ための戦術であり、その意味では“合理的”な一面を持つ
・同時に、ゲーム全体の進行を遅らせ、他プレイヤーや運営に大きなストレスとコストを与える行為でもあり、マナー・倫理の面では強い批判を受けている
・大会ルール(TDA)上も、「持続的かつ意図的な遅延」はペナルティ対象であり、クロックやH4H、ショットクロック等を通じて、運営は牛歩の弊害を抑えようとしている
・ICM的には、特にバブルやサテライトなど、ごく限られたスポットで「時間を使うことがEV上合理的になる」場面がある。その数学的裏付けがあるからこそ、牛歩は根強く残り続けている
・しかし、牛歩そのもの以上に重要なのは、「他人の牛歩に自分がどう反応するか」。そこに、プレイヤーとしての成熟度や、どの価値観に軸足を置いているかが表れる
牛歩をめぐるスタンスは、人によって大きく異なるため、牛歩の是非は、簡単に結論の出ないテーマです。
だからこそ、「牛歩をどう扱うか」「牛歩にどう反応するか」は、単なるテクニック論を超えて、ポーカープレイヤーとしての「生き方」そのものを映し出しているのかもしれません。
[参照先]
※1:Can Any Player Call Clock After Isaac Haxton Tanks Six-Minutes in WSOP Main Event?
https://t.co/6yspMNBDxW
※2:Drama & controversy on the bubble of the 2025 WSOP Main Event
https://t.co/LgM4XLeRf0
※3:Stalling is Cheating
https://t.co/6PySqIv2ME
※4:The Rec: William Kassouf’s hygiene problem
https://t.co/AOE6mvfkLl
※5:Poker TDA Rules, Procedures, & Addendum
https://t.co/LHT1ovDvme
※6:Rule Proposal for TDA
https://t.co/zhiA5Ztjdr
#ポーカー
#マインドスポーツ
#長崎から世界へ December 12, 2025
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