信頼回復 トレンド
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2025.12.20 04:00
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暴力、差別、強姦、殺戮。その体験を言葉にできない被害者を見た時、多くの人は「言語に絶する経験だから」語ることができないのだと想像する。だが、著者はそこに否を唱える。彼らが語り得ないのは、聞き手が信頼できないからだと。試されているのは、聞き手が信頼に足るかどうかだと。→
ぼくらは想像を超えた悲惨な経験を聴く時、その証言について「本当?」と時に思う。証言が信頼できるものかどうかを疑ったりする。しかし、聞き手として疑うべきはそこではない。証言者が聞き手である私たちを信頼できるかどうかの方に疑いの目を向けるべきだ。あなたが、被害者の口をつぐませているかもしれないのだから──。
他者の言葉に耳を傾けるということは、聞き手にとって、相手の話が自分にわかる/わからないと判断することではなく、これまでの自分には理解の及ばなかった、想像することができなかった現実のあり方の可能性へと、自分自身の心と感性を開いていく行為であると思う。それには勇気が要る。共感で苦しくなることもある。
一方で、確かに暴力を受けた人は、自分の身に何が起きたのかを理解することが時にできなくなる。「自身との関わり方と世界との関わり方という二重の意味」で、その根幹が揺さぶられ、沈黙を余儀なくされる。しかも、加害者は、被害者の沈黙を望み、その犯罪の痕跡を消し去ろうとする。一文を引用しよう。
「極度の不正と暴力という犯罪の最も陰湿な点は、まさに被害者に沈黙させることにこそある。沈黙は、それらの犯罪の痕跡を消し去るからだ。構造的、物理的暴力は、被害者のなかに入り込み、被害者と社会との物理的、心理的つながりを傷つけ、彼らの語る能力を攻撃することで、気づかれることなく作用し続けるのだ」
だが、とはいえ、「沈黙すると、加害者の思うツボだぞ」と被害者に言って証言を強制するわけにはいかない。もちろん、言い淀む被害者に対し、「こういう気持ちだったでしょ?」と聞き手が言葉を与えて、無理やり「理解しやすいストーリー」に話を落とし込もうとしてもならない。そんなのは、むしろ暴力である。
さまざまな戦地を取材してきた著者は、そんな「語ること」「聞くこと」の重みを問いながら、人が「非人間化された状態から回復する」ために、いかに他者と向き合うことができるのかという思索を繰り返していく。
そもそも、暴力の犠牲となり、同胞たちが斃れていく現場から奇跡的に生還できた人間が世界や他者を以前と同じように信頼できるはずがない。暴力は一度振るわれたが最後、その人の中に根を下ろし、その人に対して生涯にわたって作用し続ける。そんな人に対して、世界のために、歴史のために、正義のために語るよう求めることは、それもまた暴力になりうる。そしてそう感じる限り、彼らはその重い口を決して開こうとはしないだろう。
ぼくらはしばしば、被害者の言葉を待つことができない。早く言語化したいという誘惑にかられてしまう。「相手をわかりたい」という正義感のもとに。そうして、不正確な表現で被害者に語らせてしまうのだ。
「不明瞭な描写は、恐ろしい事実を想像したくない者たちを守る。『言葉では描写できない』という神聖化された表現は、その作用においてタブーとほとんど変わりがない。なぜなら、『言葉では描写できない』という概念は、その体験をしなかった者が、体験した者の苦しみがどんなものだったかを想像することを妨げるからだ。感情移入も同情も、誰にでも当たり前に備わった能力ではない。なにが道徳的に非難に値するのか、なにが人を傷つけ、貶めるのかを、すべての人が自動的に理解できるわけではないのだ」
こうして、「言語に絶する」という被害に対する表現が、被害者と聞き手を引き離していく。
語ることの不可能性を超えて、それでもなお語るために必要なのは、被害者と世界との信頼回復である。
「『言語に絶するものは、囁き声で広まっていく』──インゲボルク・バッハマンはそう書いている。『とても言葉にできない』または『表現できない』とされるものを伝えるには、ただ囁くしかないのかもしれない。拷問、暴力、屈辱、強姦については、つっかえながら、口ごもりながら、断片的に語るしかないのかもしれない。痛みを覚えながらでなければ思い出せないことや、恥を覚えながらでなければ告白できないことを語る際には、ところどころ空白もあるかもしれない。だが、まさにだからこそ、『それ』は言葉にできるのだ」
『なぜならそれは言葉にできるから』
著者:カロリン・エムケ
発行:みすず書房@misuzu_shobo December 12, 2025
フィンエアーがなにかした訳じゃないけど…フラッグキャリアの悪い面がでたよね…
しかも自分から信頼回復できる問題じゃない、且つコツコツ積み上げてた信頼は国のせいで急速に無くなったし
まあ、乗ったことないし機内サービスがどうかは知らんけど、アジア路線多い会社だから影響はデカそう December 12, 2025
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