戦前生まれの母親は、決して父親の悪口を
人前で言いませんでした。
そんなに商売がうまくいっているようにも
思えないのに、よく我慢しているなあと
子供ながらに不思議でした。
父親も母親の前で随分と横柄に思えることを言っていて、よくこんな関係で長く一緒にいるもんだと思っていました。
母親が亡くなった時、火葬場から遺骨を抱いて葬儀場に戻った父親が、
「情けない姿になってしまって」と
泣き崩れました。
それまで、一度も泣いた姿をみせたことがない父親の泣き崩れる様子が心に焼きつきました。
父親の死後、遺品を整理していて、毎日つけていた日記を読んでみました。
すると、そこには、決して母親や私の前では語らなかった商売上の苦悩が記されていました。
戦前生まれの倭国人と戦後生まれの倭国人。
すっかり変わってしまいました。
また、それを比べることができる人間も
いなくなりつつあります。
それだけに、私の記憶を次世代に引き継いでいきたいと思います。 December 12, 2025