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🟢資源枯渇で高値続くウナギの「完全養殖」実用化へ前進

飼育コスト２０分の１に！
新型水槽を開発、衛生面の課題解決へ！

種苗である天然シラスウナギの資源枯渇により、価格高騰が続くウナギ。今月５日まで開催された、絶滅の恐れがある希少種の国際取引を規制する「ワシントン条約」の締約国会議では、最終的に否決されたものの、全種のウナギを規制対象にする提案が議論されたばかりだ。こうした中、国立研究開発法人水産研究・教育機構（本部は横浜市）では、天然種苗に頼らない「完全養殖」技術の実用化に向けて前進している。

　倭国で流通するウナギの９９％は“養殖もの”。国内の河川で採取したり、輸入された天然のシラスウナギを育てている。それらが確保できなければ成り立たず、種苗を卵から人工生産して育てる完全養殖への期待が高まるが、コストが高く実用化は実現していない。そんな状況の打開へ、水産研究・教育機構は７月、種苗の生産コストを大幅に削減できる新型水槽を開発し、特許も取得したことを発表した。

　機構の前身・水産総合研究センターは２００２年、種苗の人工生産に成功し、それを育て上げる完全養殖も１０年に成し遂げた。どちらも世界初だったが、１６年時点での種苗生産コストは１匹当たり約４万円。新型水槽ではその２０分の１、約１８００円にするところまでこぎ着けた。

■ケアが難しく

　赤ちゃんの状態（仔魚）からシラスウナギに成長するまでの期間が、約３００日ある上、仔魚は死にやすくケアが難しい。１日５回、餌をやる度に濁った水を全て捨てる衛生面への徹底的な配慮が必要で、コストが高くなる――。これがかつての種苗生産の実情だった。こうした課題を解決しようと開発されたのが新型水槽だ。

　二つの水槽が並行に置かれていることが特長で、水槽間はパイプでつながっている。仔魚が一方の水槽で餌を食べ終えたら水流を発生させることで、傷をつけずにパイプを通してもう片方の水槽に移動させるようにした。空になった側の水槽には掃除後、再び仔魚を戻すことができ、餌やりで濁った水の交換にかかる手間と費用を大幅に抑えられるようになった。

■「千円以下」目標

　新型水槽では、一つの水槽当たり１０００匹を一度に生産可能だという。現在、飼育コスト１匹約１８００円に対し、天然種苗は１８０～６００円。実用化できる水準に迫りつつあり、機構は新型水槽や餌などの改良をさらに重ね、「３年以内に１匹１０００円以下」をめざす。機構の須藤竜介・量産グループ長は「誰もが心置きなくウナギを味わえる未来を実現するため、研究をさらに進めたい」と意気込む。

■量産へ民間企業も挑戦

　同機構は完全養殖ウナギの量産体制の整備を視野に、民間企業と提携し技術提供などを進めている。

　３社ある提携相手の一つである武州ガス株式会社（埼玉県川越市）は、２２年からウナギ養殖事業に新規参入しており、２４年からは、機構と共同研究契約を締結。完全養殖によるウナギ量産に向けた取り組みに挑戦している。プロジェクトは始まったばかりだが、同社新規事業企画チームの大河原宏真さんは「持続的にウナギを食べられるように、民間レベルでの実験を進めて、商用化に貢献したい」と決意する。

■早期の流通めざし支援／横山信一参院議員（水産学博士）

　天然のシラスウナギの漁獲量が減り続ける中、完全養殖ウナギの生産コストを下げ、量産化の道筋を立てることで市場に流通させる「産業化」を急がなくてはならない。

　できれば、再びウナギの規制が議論されると予想される５年後のワシントン条約締約国会議までにめどが立つのが望ましい。これが実現すれば、天然資源を守ることにもつながる。

　公明党はこれまでも、天然資源を守るよう一貫して政府に働き掛けてきた。シラスウナギ漁は誰でも簡単にできるので、密漁などの不透明なルートも多い。２０２３年には違反時の罰則を強化するとともにシラスウナギ漁を都道府県知事の許可制とした。

　今後も、完全養殖の取り組みを強力に支援していきたい。

#公明新聞電子版 2025年12月20日付 https://t.co/toNuyFYB3q December 12, 2025