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小豆島
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2025.12.17 01:00
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「永い夕凪」のポスターを作ってみました
小豆島生成AI動画コンテスト エントリ―№59
#小豆島
#二十四の瞳映画村
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@24_hitomi https://t.co/lUeHcqTc6Q https://t.co/fhohT12nOm December 12, 2025
「永い夕凪」を制作するにあたって、以前も少し触れましたが、まずはWeb上でロケハンの“まねごと”を行いました。
それと同時に、もう一つどうしてもやってみたかったことがあります。
それは、実際の映画制作のフローをできるだけなぞることでした。
その一環として、今回は5分の短編作品ではありますが、映像に先立って原作となる短編小説を制作しました。
このポストの最後に全文を載せていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
このポストで一番伝えたいのは、
「原作通りに映像化することが、いかに難しいかを身をもって知った」
ということです。
小説の中では、
・時期が2025年の年末であること
・主人公の名前が「葵(アオイ)」であること
・分校出身であること
・「海斗」という幼馴染がいること
こうした情報を文章として書くことに、ほとんど違和感はありません。
むしろ、ごく自然に、そして美しく表現することができます。
ところが、これを映像作品にしようとした瞬間、状況は一変しました。
場所や時期をどう伝えるか。
名前をどう自然に認識させるか。
分校出身であること、5年生のときに閉校したこと、そして近々解体されること。
これらを説明台詞やナレーションに頼らず、
「視聴者の目に入る情報だけで、自然に理解してもらう」
というのは、想像以上に難しい作業でした。
今回の作品では、
・フェリー内で流れるニュース音声や映像
・スマートフォンの画面
といった要素を使い、できる限り説明にならない形で情報を置いています。
もちろん、ナレーションやテロップを否定しているわけではありません。
ただ、あからさまな説明を避けながら、自然に伝わる美しさを持った映画に、個人的に強い魅力を感じています。
今回は、そこを一つの目標として制作しました。
正直に言うと、
たった5分の短編で、しかもこれほど短い原作があるにもかかわらず、
心が折れそうになるほど苦労しました。
原作小説を読んでいただければ分かると思いますが、
大筋は同じでも、映像化した結果、内容はかなり違うものになっています。
これは意図的に変えたというより、映像にする過程で、変えざるを得なかった部分がほとんどです。
その結果として、
自分自身は「原作よりも、完成した映像の方が映像作品としては良くなった」と感じています。
過去に映画を観ていて、
「原作と全然違うじゃないか」と思ったこともありました。
でも今は、なぜそうなるのかが、痛いほど分かります。
原作と映像は、似ているようで、まったく別の表現なのだと。
以下、原作小説です
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短編小説:潮風の分校(夕凪分校版・最終稿)
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序章:帰省
冬の海は、光を吸い込んだように静かだった。
桟橋に立つアオイは、潮の匂いを胸に満たしながら、
懐かしさと距離の混じった感覚を味わった。
実家に戻ると、母が玄関で軍手をはめていた。
「アオイ、ちょうどよかった。あんたの部屋ね……
そろそろ整理せんといけんと思って」
声は軽いが、どこか言いにくさが滲んでいた。
アオイが二階の自室に入ると、
部屋の中央に段ボール箱がひとつ置かれていた。
ふたが半分だけ開いたまま。
「……母さん、触ったんだ」
しゃがんで箱を引き寄せる。
中には昔のノートや折り紙の残骸が雑然と詰め込まれている。
その上に──
新しい紙だけが一枚、そっと差し込まれていた。
新聞の切り抜き。
角に、小さなメモがテープで貼ってある。
「アオイ、知っとくほうがええと思って。
言えずにごめんね 母」
記事の見出しは、
「夕凪分校 老朽化のため解体へ」
胸がひやりとした。
段ボールの底から古い国語の教科書が出てきた。
ページをめくると、色あせた鉛筆の文字が残っている。
『おれは必ずもどってくるけん
アオイは島を頼む』
子どもの字。
二十年前のまま。
アオイは、かすかに笑って、目を伏せた。
「……ほんとに、バカだよ。カイト」
最後の年、分校にいたのは
小6のカイトと小5のアオイ──二人だけだった。
⸻
第一章:土の道
夕暮れ前、アオイは家を出た。
冷たい風が頬を撫で、空はゆっくり赤みを増していく。
舗装路の手前で、
横に伸びる赤茶色の土の道が現れる。
分校へ向かう一本道。
アオイは足を止め、小さくつぶやいた。
「……変わってない」
土の軟らかな沈み込み。
風に揺れる草の匂い。
歩くたびに、遠い記憶がひとつずつ戻る。
前方に、分校の影が淡く見えてきた。
⸻
第二章:教室の残像
夕凪分校の跡は静まり返り、
板壁は剥がれ、窓は白く曇り、
校庭のブランコだけが風に合わせて揺れていた。
アオイはゆっくりと校舎に入った。
床が軋み、冷気がほおに触れた。
夕陽が教室へ斜めに差し込み、
埃が光の中をゆっくり漂っている。
教室には、
机が二つだけ残っていた。
どちらも埃をかぶり、
片方の椅子は少しだけ後ろにズレている。
そこに、二人だけの最後の教室が閉じ込められていた。
アオイは、自分が座っていたほうの机にそっと触れた。
埃がふわりと舞い上がり、光に溶けた。
ふと視線を黒板に移すと、
隅にうっすらと二本の白い線が残っている。
かいと 12
ーーー
あおい 11
ーーー
「……残ってたんだ」
アオイはしゃがみ、
“11”の線に指を触れた。
粉がかすかに指につく。
その上には、少しだけ高い“かいと”の線。
アオイは小さくつぶやいた。
「追いつけなかったね……」
それだけでよかった。
⸻
第三章:石垣と書き置き
校舎を出ると、
石垣の上にオリーブの木が影を落としていた。
銀色の葉が夕陽を反射して光っている。
アオイはその石垣に教科書を置いた。
風が一枚だけページをめくる。
再び現れた文字。
『おれは必ずもどってくるけん
アオイは島を頼む』
アオイは笑い、少し首を振った。
「言って……いつの間にか行っちゃったくせに」
でもその声は、どこか優しかった。
⸻
第四章:光の帯
風が吹き、アオイの髪が揺れた。
夕陽は海面へ一本の光の帯をまっすぐ落としている。
その先端に──
ひとりの後ろ姿が立っていた。
逆光の中で輪郭だけが揺れている。
「……カイト?」
アオイは名前を呼んでいた。
一歩踏み出す。
土の柔らかな音。
さらにもう一歩近づこうとした瞬間、
影は光に溶けるように薄まっていった。
「待って……」
伸ばした手は空をつかんだ。
影は消え、海だけが残った。
アオイは立ち尽くした。
涙は出なかった。
胸の奥だけが静かにひび割れた。
⸻
終章:足跡のつづき
夕凪分校のほうを振り返ると、
夕陽が教室の窓に淡く反射した。
アオイは石垣に置いた教科書にそっと手を触れた。
「……ここに置いていくね」
声というより、
息に近い言葉だった。
空は赤から青へ変わり、
土の道が海へ向かって静かに続いている。
アオイは歩き出した。
足跡がひとつずつ刻まれ、
風がゆっくりその輪郭を揺らしながらも、
「今ここを歩いた印」だけは確かに残る。
「行くよ、カイト」
潮風がそっと背中を押した。
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