かつて、MMORPGは“インフラ”でそこには唯一無二の熱がありました。

かつて数千人、あるいはそれ以上の人々が熱狂したMMORPGの世界。しかし現在、その風景は大きく様変わりしています。

「Time2Win」や「Play2Win」と呼ばれた、時間をかけて強くなるスタイルは時代にそぐいません。よく言われる「可処分時間の減少」だけが理由ではなく、そこにはもっと根本的な変化があるように感じています。

当時を振り返れば、「リネージュ」や「ラグナロクオンライン」のようなMMORPGには数千人規模のプレイヤーが常駐していました。

当時は、個人が作ったWebサイトの掲示板や2ちゃんねる（今の5ちゃんねる）、したらばの掲示板などに夜な夜な集い、常に誰かと繋がっている感覚があったあの時代、ネットゲームは単なる娯楽を超えた存在だったと思います。

ですが、今後はMMORPGが爆発的に復権することはおそらくないと思います（ファンとしては非常に寂しいですが）。

なぜなら、人々が繋がるための「インフラ」としての役割は、すでに他のツールに取って代わられているからです。

かつてのMMORPGは、間違いなく1つの「生活インフラ」でした。SNSやDiscordが普及しきった現在とは異なり、当時はMMORPGこそが、人と繋がれる数少ない貴重な場所だったのです。

その根っこにあるのは友達の家に集まってゲームをしたあの感覚に近いのかもしれません。1つの画面を囲み、裏技やボスの強さについて語り合う。そこには“共通の話題”がありました。そして、MMORPGには同様の共通の話題があり、さらに、共通の敵（ボスや敵対ギルド）や共通のメリット（レアアイテムの入手など）を分かち合って戦う。これほど強固に人と人を結びつける面白さは、MMORPGの他にはありませんでした。

しかし今、何かを「共有」する手段はあまりにも増えすぎました。Xで呟き、Discordで通話し、ストリーミング配信のコメント欄で盛り上がる。これらはすべて、かつてMMORPGが担っていた役割の代替です。共有するコンテンツも手段も豊富な現代において、時間的コストが高く、少しマニアックなMMORPGという場所にわざわざ集まる理由は薄れてしまいました。

もちろん、リアルタイムの熱狂が消えたわけではありません。メタバースやストリーミング配信がそうであるように、「いま、この瞬間」を共有する同期的な体験には、依然として凄まじい熱量があります。

MMORPGはかつて、私たちが集まり、熱狂し、繋がりを確認するためのインフラでした。その役割をDiscordやSNSといった新しいインフラに譲り渡した今、より軽やかに繋がり合える場所を選んでいるのかもしれません。 December 12, 2025

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