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石の骨
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2025.12.08〜(50週)
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水中適応の影響は骨の微細構造にまで🐧
#古知累論文紹介
今回は、恐竜や鳥類の「呼吸」と「骨」の関係に迫る、最新の研究論文をご紹介します。
古生物学において、骨の化石から生きていた頃の姿を復元するのはとても難しい作業です。
特に、内臓のような柔らかい組織は化石に残りにくいため、謎に包まれています。
みなさんは、鳥類が非常に効率的な呼吸システムを持っていることをご存知でしょうか?
鳥の体には、肺につながる「気嚢(きのう)」という袋があり、これがポンプのような役割を果たして常に新鮮な空気を肺に送り続けています。
実は、多くの恐竜もこの気嚢システムを持っていたと考えられています。
なぜそれが分かるのでしょうか?
それは、気嚢が発達すると、骨の中に入り込んで「穴(含気孔)」を開けるからです。
骨の中に空洞ができることで、体は軽く、丈夫になります。
古生物学者はこれまで、化石の骨に空洞があるかどうかを、気嚢を持っていた証拠としてきました。
さらに最近の研究では、顕微鏡レベルの痕跡も見つかっています。
それが「ニューモスチウム(pneumosteum)」と呼ばれる特殊な骨組織です。
これは、気嚢が骨に接触している部分にできる、独特の繊維状の組織です。
つまり、骨に穴が開いていなくても、この組織があれば「気嚢があった!」と言えるかもしれない、という強力な手がかりなのです。
しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。
「すべての鳥類や恐竜で、この痕跡は残るのだろうか?」
今回の論文の執筆者たちは、ある特定のグループに注目しました。
それは「水の中に適応した鳥類」です。
具体的には、ペンギンやカイツブリなどです。
彼らも鳥類なので、当然「気嚢」を持っています。
しかし、水に潜るために体を重くする必要があり、骨の中の空洞は退化していることが多いのです。
では、顕微鏡で見えるあの「ニューモスチウム」という痕跡はどうなっているのでしょうか?
研究チームは、現生の鳥類、ワニ、哺乳類など、合計21種類の動物の脊椎骨を薄くスライスし、顕微鏡で詳細に観察しました。
その結果、多くの空を飛ぶ鳥たちの骨には、予想通りニューモスチウムが見つかりました。
しかし、ペンギンやカイツブリの骨からは、ニューモスチウムが完全に見当たらなかったのです。
彼らは間違いなく気嚢を持っているにもかかわらず、です。
また、文鳥の仲間などフィンチ類のような小型の鳥でも、この痕跡が見られないケースがありました。
この発見は、古生物学にとって非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、「化石に痕跡がない=気嚢を持っていなかった」とは断言できなくなるからです。
もし発掘された恐竜の化石に、骨の穴もニューモスチウムもなかったとしても、すぐに「気嚢なし」と判断するのは早計かもしれません。
この研究は、「ペンギンのように水中生活に適応したグループでは、骨から呼吸の痕跡が消えてしまうことがある」ことを示しており、痕跡がない恐竜でも、実際には気嚢を持っていた可能性があると教えてくれます。
逆に言えば、骨に穴やニューモスチウムが見つかれば、それは気嚢が存在した強力な証拠であることは変わりません。
しかし、「証拠の不在」は「不在の証明」にはならないのです。
この研究は、化石から柔らかい組織を復元する際の落とし穴と、慎重な観察の重要性を改めて教えてくれています。
水辺に暮らしていたスピノサウルスなどの恐竜たちの呼吸システムを考える上でも、視点を変えるきっかけになるかもしれませんね。
元論文URL→ https://t.co/g9herbE82W December 12, 2025
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