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襷がけの二人
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2025.12.12 10:00
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嶋津輝さん『カフェーの帰り道』読了です。これは本当に滋味のあるいい小説でした🥹 こういう、市井の人々の人生を丁寧に描く小説が私は大好きです。大正〜昭和という激動の時代下に生きる女性たちの息づかいが感じられて、そのぬくもりがじんわりと伝わってくる良作。
【あらすじ】
関東大震災後の東京。上野の外れにある小さなカフェー・「西行」では、個性豊かな女給たちが働いている。それぞれに事情を抱えた彼女たちは華やかな「モダンガール」ではないが、互いに励まし合いながら日々を誠実に生きている。やがて昭和となり、戦争が彼女たちのささやかな暮らしにも影を落とし始める。戦地に赴く恋人への不安、出征した息子への手紙、家族の喪失……。それでも彼女たちは「西行」という居場所で緩やかに支え合い、戦前・戦中・戦後をそれぞれの強さと優しさで生き抜いていく──。
【こんな人にオススメ】
・しみじみと味わい深い小説を求めている人
・派手な事件よりも、日常の機微や心の揺れを読みたい人
・一人ひとりの登場人物にじっくり寄り添いたい人
【私の感想】
直木賞候補になった『襷がけの二人』がすごくよかったので、こちらも迷わず手に取りました。そしてこれがまた大当たり。登場人物の描き方が巧みで、一人ひとりに強い愛着が湧き、読み終えてもすぐに会いたくなる。何度でも読み返したくなる作品でした。
時は大正から戦後まで。「女給」という仕事を軸に、時代の片隅を生きた女性たちの人生が描かれています。連作短編集で、章ごとに主人公が交代し、語りの角度や視点が変化するという構成。
舞台となる「カフェー西行」と、そこで働く女給たちの緩やかなつながりが、一冊を通して大きな群像劇となって立ち上がってきます。
文体は品があってやわらかく、とても読みやすい。どこか朝ドラのような穏やかで優しい時間が流れていて、情景が自然と浮かんできます。
登場人物がみんな魅力的で、実在したのではと思うほど身近に感じられます。連作形式ならではの多面的な描写によって、それぞれの人物の奥行きが浮かび上がってくるのも見事。
強さと弱さを併せ持つ“普通の女性たち”が優しい目線で温かく描かれ、その姿に深い共感を覚えます。
自分も西行の常連客になったような気持ちになり、彼女たちを応援したくなりました。
私が最も心を揺さぶられたのは「タイ子の昔」の章。息子を想う母の姿に、胸が締めつけられて涙がこぼれました😢
そして、戦争が彼女たちの慎ましい暮らしを容赦なく踏みにじっていく様には、怒りが沸々とこみ上げてきます。
こんなにも真面目に控えめに、必死に生きている人たちの生活を粉々に破壊するとは、一体何ということをしてくれるのだ💢
今がどれほど恵まれた時代であるか(最近何やらきな臭い感じがしますが……)、そして「二度とあの時代を繰り返してはいけない」という思いが強く胸に残りました。
静かで、穏やかで、でも確かな芯を持つ物語。市井に生きる人々の生き様を、丁寧に優しく、そして尊厳をもって掬い上げた一冊でした。 December 12, 2025
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