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パブリシティ権
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2025.12.15 14:00
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【研究メモ・中間試案】
Q. 刑法における名誉毀損罪・侮辱罪と民法における名誉・名誉感情その他人格権保護の救済手段と著作権法における著作者人格権保護法制はどう関連し合うか?
・昭和6年を境に一番手厚かったのは著作権法。特に死者の保護の観点から、刑法は虚偽事実の摘示のみに限定していることに注目。あと現行著作権法は死後の著作者人格権侵害については非親告罪(著120条)、刑法の死者の名誉毀損罪は親族または子孫という遺族あるいは利害関係人の申立に基づく検察官指定の者に告訴権を限定(刑訴233&234条)した親告罪。ただし法定刑が重いのは刑法の方(3年以下の拘禁刑/50万円以下の罰金)で、著作権の方は軽い(500万円以下の罰金)。両者は保護法益に違いがあるためにこの違いがあると考えるのが筋がいいかな?
・パロディ事件第二次上告審(最判昭和61年5月30日民集40巻4号725頁)では旧著作権法だが謝罪広告請求するためには名誉声望が害された(→社会的評価が低下した)事実を必要としたが、これは刑法230条&231条でいう抽象的危険犯構成…すなわち社会的評価の低下の「おそれ」では足りないことも示唆している(損害が前提なので当たり前だと言われるとそうではあるが)。
・他の人格権保護はほぼ判例の中で展開されてきた。特にプライバシー、肖像権、平穏生活権、氏名権・パブリシティ権、自己決定権、リプロダクション権…これらは憲法由来であり民法の諸規定を間接適用する中で認められてきたものだが、法律上明文化されているかと言われると必ずしもそうではない。
・プライバシーの語義について、倭国では初めは秘匿されるべき情報などと意味に限定されがちだが、英語のPrivacyはアメリカでのプライバシー法に関するWarren&Brandeis(1890)やProsser(1960)の展開を見ると、もう少し広い意味合いで使われている。少なくとも「私行」に限った意味合いではない。
・ドイツの著作者人格権法制を考えるにあたっては、人格権それ自体の特別の保護形態として考えるのがよさそう。ただし、例えばドイツ刑法185条(侮辱罪)→187条(名誉毀損罪)の並び順を見てると、社会的評価というよりも人格的利益の保護が優先されてそうにも見える。これはおそらく古代ローマ法のインユリア訴権の影響があって、ローマ法継受した頃からの名残ともいえるかもしれない。
・差止請求権の対象で法律上で明文化されてるといえるのは著作(者人格)権と民法の名誉回復措置のみ。他の人格権一般は、民事保全法の仮処分制度を使って差止を求めるスキームが名誉権に関しては最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁(北方ジャーナル事件)により確認。それにもかかわらず、パブリシティ権(氏名権)に基づく差止請求が認められたケース(東京高判平成3年9月26日判時1400号3頁)があったりはする。ただし、人格権一般の差止ついては最判平成14年9月24日集民207号243頁(石に泳ぐ魚事件)を援用するのがいいと思う。ちなみにドイツ民法ならドイツ民法1004条所定の妨害排除請求権を類推適用するらしい(ちなみに抗弁事由として請求者の受忍義務も定められている:1004条2項)。
・このように人格権侵害への救済手段には倭国について言えば、どの内容の人格権かによってどこまで法律上の保護、(厳密には法源ではない)判例上の保護を受けるかに関しグラデーションがあるので判例や学説の展開を時系列順に並べて検討すると新たな発見がまだあるかもしれない。 December 12, 2025
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