川のほとりで ドラマ
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2025.12.12 05:00
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徳島県生まれ京都在住の私が
琵琶湖の水問題を短編集にしてみました。
アイデアは私、執筆は5つのAIです。
【琵琶湖の脅し】
一、湖畔の皮肉
滋賀県大津市。琵琶湖のほとりに、老漁師・源三の小屋がある。
夜明けとともに網を張り、夕刻には鮎を京都や大阪の市場へ運ぶ——五十年続けてきた仕事だ。
京の料亭では決まってこう言われる。
「滋賀の水で育った魚は格別や」
源三は愛想よく頷くが、胸の奥では苦々しく呟く。
「水のおかげ、ねえ。タダで使っといて、よう言うわ」
琵琶湖の水は京都市の水道の九十九%を賄い、淀川を下って大阪まで流れ、近畿の命脈を支えている。
京都府は滋賀県に年間約二億円の「感謝金」を支払っているが、源三に言わせれば「焼け石に水」だ。
保全の負担は滋賀が負い、恩恵は下流が独占する。
その構図は、ずっと変わらない。
二、渇水と脅し文句
ある夏、記録的な渇水が関西を襲った。
テレビには京都市長が深々と頭を下げている。
「滋賀県の皆様、どうか水の供給にご協力を」
その映像を眺めながら、源三は居酒屋で仲間と盛り上がった。
「見たか。あいつら、うちの水がなきゃ干上がるんや」
「せやな。止めたろか? 琵琶湖の水、ぜーんぶ止めたろか!」
どっと笑いが起きる。
滋賀県民の定番ジョークである。
しかし、源三の脳裏には別の記憶がよぎる。
四国で聞いた、香川県と吉野川の話だ。
三、四国の水脈
香川県は古くから「水不足の県」として知られる。雨が少なく、大河もない。
満濃池をはじめ無数のため池を築き、工夫してきたが、それでも水は慢性的に足りなかった。
そこで目を付けたのが、隣県・徳島の吉野川である。
早明浦ダムに貯えた水を讃岐山脈を貫くトンネルで香川へ送る——それが香川用水だ。
徳島の人々の胸中は複雑だったはずだ。
「俺らの洪水を抑えるための水を、向こうが持ってくんか」と。
香川は建設費を負担し、水源保全にも協力する。しかし、源流を持つ徳島・高知は「分水」という形で折れるしかなかった。
もし香川用水が止まれば、香川は干上がる。
脅しは上流に効く。
源三は呟く。
「四国は上流が強いんやな……こっちは逆や。止めたら、沈むのはうちや」
四、ブーメランの法則
琵琶湖には四百六十本の河川が流れ込み、出口は瀬田川ただ一つ。
もし瀬田川洗堰を閉じれば、湖の水位は上がり、滋賀の平野部が軒並み水没する。
「水を止めたろか」というジョークは、笑って済めばいい。
だが現実には、脅しはブーメランのように上流へ返ってくる。
五、夢の中の閘門
その夜、源三は奇妙な夢を見た。
彼は瀬田川洗堰の前に立ち、巨大な鍵を握っている。
酔った勢いで閘門を全閉にした。
翌朝、琵琶湖は静かだった。水位がわずかに上昇している。
一週間後——湖岸の田んぼが水浸しになり、草津の商店街が冠水し、大津の住宅街は膝まで水に浸かった。
雨が降るたびに水は行き場を失い、滋賀の大地を呑み込んでいく。
屋根の上で、源三は叫んだ。
「開けろ! 早よ開けろ!」
同時に京都から電話が鳴り続ける。
『水が来ない! どうなってるんや!』
源三は絶叫する。
「来るな言うたやろ! 止めたんや!」
下流は干上がり、上流は沈む。
そのとき、夢の中に徳島の漁師が現れた。吉野川のほとりで笑っている。
「おい源三。お前らは止めたら自分が沈む側やな。うちは止めたら向こうが干上がる。羨ましいか?」
源三はかぶりを振った。
「いや、どっちも皮肉や。香川は“水を買う”て体裁で引いてくる。
うちはタダで流すしかない。脅しは結局、自分に返ってくるんや」
六、水の皮肉
目覚めた源三の額は汗で濡れていた。
翌朝、彼はいつものように網を張り、京都へ魚を運んだ。
市場の商人が言う。
「今日もええ水や。ありがとさん」
源三は苦笑して答えた。
「どういたしまして。でもな……本気で水止めたろ思うても、沈むのはこっちなんや。
徳島みたいに“止められる側”のほうが、水では強いんかもしれんわ」
商人は笑い、源三も笑った。
だが心の底で分かっていた。
水の脅しはいつもブーメラン。
自然は、人間の都合に付き合ってはくれない。 December 12, 2025
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