ハイスコアガール アニメ
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2025.12.15 12:00
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「『他人が嫌だと言うことはやめましょう』は社会では通じないこともありますよ」という話が二次創作やコミケとなんの関係があるのかっていうと、著作権法というものがそもそも「著作権者が嫌だと言ったらなんでもかんでもやめなさい」という形になっていないからなんですね。
もちろん著作権法第17条以下に規定される著作者の権利はあります。ただ著作物にまつわる権利一切が著作権法で保護されるわけではなく、「そこ(著作権法)になければないですね」というのが現実であるわけです。
※ここでは二次創作を「ある著作物に対して依拠性があり、その旨を明示した著作物」と定義します。その意図は本文中にて触れます。
平成23年度文化庁委託事業 海外における著作物のパロディの取扱いに関する調査研究(PDF)
https://t.co/XvbEnY48fI
ちょっと古いですが文化庁が監修しているのである程度は信頼に足ると見ていいでしょう。
P.103に「いわゆるコミックマーケットにおいて販売されている同人誌が、形式的には他人の著作物を無断で利用するものであり、著作者や著作権者の許諾がない限り著作者の権利の侵害になり得るとしても、そうした活動は一定の限られた環境においてかねてから現実に行われており、権利者の方も、模倣の連鎖が新たなクリエイタの創出を促進しているという理解の下にこれを黙認している場合、たとえ著作者の権利を侵害する行為が存在するとしても事実上問題となっていないものと理解することができる」とあり、権利侵害になりうる行為でもある種の慣習によって事実上問題にならないパロディが存在するとされています。
もちろん二次創作が作られる作品の権利者すべてが二次創作に寛容なわけではなく、また「こういうのならいいがああいうのはダメ」みたいな内容によって好悪を分ける場合もあるでしょう。
それでも慣習によって黙認というのが全体的な傾向である現状においては、「個人による二次創作も含む」と明確に禁止しなければ、同人誌として発表する限り問題にならない、問題にすることも難しいでしょう(権利者が二次創作禁止と明言しても、「それは商業レベルの話であって個人を縛る意図はない」と解釈されるしなんなら一部の権利者自身がそう表明する有り様なので)。
じゃあ「個人の二次創作も禁止」と名指ししたところで本当に制限できるのかっていったらそうは問屋が卸さないと私は見ています。
「(二次創作に登場する)キャラクターが原著作物のそれと同一あるいは類似であるからといって,これによって著作権侵害の問題が生じるものではない」 という判決も出ています(知財高裁令和2年10月6日)。
これによれば単にキャラクターや設定を流用しただけの同人誌は著作権を侵害していないのですから、少なくとも「著作権法」を根拠に差し止めることはできません。
すべての二次創作を禁止するとなると、感想や批判すら禁止ということになり、表現の自由にも抵触してきます。流石に法律が憲法に優越するとは考えにくいでしょう。
法的に云々するとなると、そもそも「二次創作」とはなんぞやという話が出てきます。法で定義できないものを法で規制することはできないのですから。
なので私はこの手の話をするときは、便宜上二次創作を「ある著作物に対して依拠性があり、その旨を明示した著作物」 と定義しています。好きでやってるとか応援のためみたいな内心には触れません(法的に判別できないので)。漫画や小説のような物語性があるかどうかも、定義の中では触れません(個別の作品の侵害性を問う場合にはそれが重要になることもあります)。悪意でやっても上記定義に当てはまれば二次創作とします。
1970年頃に「サザエさま」というサザエさんの(極めて下劣な)パロディ漫画が発表され、これに対してサザエさんの権利者が訴訟を起こし、最終的に示談になったことがありました。示談のためか判決文を見ることができないので具体的に何法で争ったのかはわかりませんが、「サザエさま」は商業誌に掲載され絵柄も比較的似ていたため侵害程度が大きいと認定されたのかもしれません。
一方で1992年に出版され大ヒットとなった「磯野家の謎」に対して、サザエさんの権利者側は強い不快感を示すも書籍版について差し止めまではできていません。「磯野家の謎」はいわゆる論評になるかと思いますが、依拠していてそれを明示ししている以上は二次創作の範疇と見ています。
感想や批判のような論評を禁止することができない以上、論評と明確に(法的に)区別できない小説や漫画を一律に禁止することもできないはずです。
もう一つ重要な二次創作関連の著作権裁判が「ハイスコアガール事件」です。「ハイスコアガール」は押切蓮介による実在する格闘ゲームを題材にしたラブコメ漫画で、2014年にSNKが著作権法違反として訴訟を起こしていましたが、翌年に和解が成立し告訴取り下げとなっています。
これも判決文が未公開(不存在?)なので具体的な争点は不明ですが、仮に本件が著作権侵害として結審していたら、二次創作に大きな影響があっただろうと思います(※注)が、そうはならなかった、ならなかったんだよ、と胸を撫で下ろしている次第です。そうならなかったのは、「著作権者が嫌だと言ったらなんでもかんでもやめなさい」ではないからです。
「ハイスコアガール」も商業作品です。ここで問題にならなかったのだとすれば、同人作品でも同様と見るべきでしょう。
ちなみにですが、本件はキャラやゲーム画面の流用それ自体よりも「SPECIAL THANKS」としてSNKの名前を記載してしまっており、あたかも許可を得てやっている(公認)と誤認させうる状態にあったことに問題が生じていたと思います。だからこそ同人誌には「公式ではありません」と明記するのは自衛の一つになると考えています。
二次創作に影響するのは著作権法だけではありません。むしろ艦これ同人誌裁判(東京地裁令和5年1月26日)では著作権法商標法など知財関係法令は出てこず、主に名誉毀損や肖像権で争われています。
ウマ娘のR指定二次創作はガイドラインで禁止されていますが、これも「著作権法」に基づき禁止するのは難しいと考えています。ですが本作は登場するウマ娘の名前の権利を馬主等から許諾を受けて使用しているようなので、成人向け二次創作が無造作に溢れている状況を放置することでその交渉が難しくなるのだとしたら、成人向け二次創作を公開することは一種の営業妨害に該当しうるため、それを制限することに合理性があると判断される可能性はあるとみています(艦これがサンリオコラボキャラに限って成人向け二次創作を禁止しているのも同様)。
個人的にはR-18よりもR-18Gの方に嫌悪感が示されるのではないかと考えていましたが、予想外の方向から弾が飛んできたので驚いている今日このごろです。極めて不快な上にそもそも政治利用であり論外である為詳しくは触れません。
ともあれ著作権法は著作権者を万能の神と崇め立てるものではなく、「権利者がダメと言ったらダメ」という単純なものではありません。
「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与する」のが著作権法であり、文化の利用という動態保存、文化の保護という静態保存、その両輪でもって文化を発展させていこうという趣旨です。著作物を利用する方が文化の発展に寄与すると判断されたら、権利者が拒否しても利用できるという建付けになります。
一方で著作者の権利は著作権以外にも色々とありますので、著作権法で規制されていないなら何でもやっていいというわけではなく、使う側も使われる側も総合的に判断していきましょうねというところで今宵はこれまでにいたしとうござりまする。
※注:https://t.co/va5s382Ygn December 12, 2025
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