瞳の奥に ドラマ
0post
2025.12.20 12:00
:0% :0% ( - / - )
人気のポスト ※表示されているRP数は特定時点のものです
彼女はいつも教室の隅で本を読んでいた。黒髪を肩まで伸ばし、制服のスカートは少し短めで、膝を揃えて座る姿が妙に大人びていた。クラスメイトたちは彼女のことを「冷たい子」と呼んでいた。理由は簡単だ。誰かが話しかけても、彼女はゆっくりと顔を上げ、細めた瞳で相手を一瞥するだけ。笑顔なんてほとんど見せない。
「目つきが悪いよね、あの子」
男子たちの間で、そんな噂が立っていた。確かに彼女の視線には棘があった。睨んでいるわけではないのに、どこか人を拒絶するような鋭さがある。でも、僕にはそれが少し違って見えた。彼女の瞳の奥に、時折ちらりと揺れる熱のようなものを感じていたから。
ある放課後、図書室で二人きりになった。僕は本を返しに来ただけだったのに、彼女はカウンターの向こうで本を整理していた。僕が近づくと、彼女はいつものように顔を上げた。
「何か用?」
低い声。視線が僕を射抜く。いつもの「目つきが悪い」表情。でも、今日は少し違った。彼女の頬がわずかに赤く、唇が微かに湿っている。図書室の空気が重く、静かすぎて、心臓の音が聞こえそうだった。
僕は勇気を出して、彼女の隣に立った。彼女は本を置く手を止め、ゆっくりと体を向けた。距離が近い。彼女の息が、かすかに僕の首筋にかかる。
「いつも、そんな目で僕を見てるよね」
僕が呟くと、彼女の瞳がわずかに見開かれた。でもすぐに、細められる。だが、今度の視線は違う。拒絶ではなく、誘うような熱を帯びていた。
「目つきが悪いって、みんな言うけど……」
彼女が囁くように言った。指先が、僕のシャツの裾に触れる。
「本当は、違うのかもしれないよ」
彼女の声が、少し震えていた。僕の手が自然と彼女の腰に回る。彼女は抵抗せず、むしろ体を寄せてきた。図書室の奥、誰も来ない書架の陰で、彼女の唇が僕の耳に近づく。
「求められていないのかもしれなかった……この目つき」
彼女の言葉と同時に、彼女の瞳が僕を真正面から捉えた。細められた睫毛の下、潤んだ黒い瞳が、欲望を隠さずに僕を射抜く。目つきが悪いなんて、誰が言ったんだろう。あの鋭さは、ただの防壁だった。この熱い視線こそが、彼女の本当の表情。
彼女の手が僕のベルトに伸び、僕の唇が彼女の首筋に落ちる。静かな図書室に、抑えきれない吐息だけが響く。彼女の「目つきが悪い」視線は、今、僕だけに向けられた甘い武器になっていた。 December 12, 2025
<ポストの表示について>
本サイトではXの利用規約に沿ってポストを表示させていただいております。ポストの非表示を希望される方はこちらのお問い合わせフォームまでご連絡下さい。こちらのデータはAPIでも販売しております。



