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2025.12.09 13:00
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少女は十四の冬、雪の降る北の街から一人でやってきた。 小さなスーツケースひとつに夢を詰めて。
誰よりも静かに、誰よりも長く、 その場所に立ち続けた。
背中に乗っているものは 終わった歌、消えた笑顔、 託された約束、継がれなかった想い、 そしてまだ見ぬ明日への責任。
それでも少女は泣かない。 泣いたらすべてが崩れると知っているから。 天を仰ぎ、目を血走らせ、 変な声を出してでも笑顔を張る。
決して「愛してる」とは叫ばない。 ただ、朝が来るたびレッスン場に立ち、 夜が更けるまで後輩の背中をそっと押す。
その愛は派手な花火ではなく、 雪の下で根を張る椿のように、 静かに、確かに、十年以上も咲き続けている。
だから誰かが「愛がない」と笑っても、 私たちはただ微笑む。
ここにいること自体が、 この世界で最も深い愛の証明だから。
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夢見て上京した少女の、いつかステージを降りる日が来ても、 きっと最後に振り返らずに、 「あ、じゃあね」と小さく手を振るだろう。
その背中に、雪が降る。 でも、もう寒くない。 十年以上、ずっと温めてくれたから。 December 12, 2025
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