■ 不安な初の海外赴任
■
牛田さんが初めてジャカルタを訪れたのは２０１４年３月。ＭＲＴジャカルタの開業支援業務として初の海外赴任だった。「まさか自分が海外に行くことになるとは夢にも思っていなかった」と当時を振り返る。　鉄道マンの人生は基本的に倭国国内で完結する。よほど大きな鉄道会社でない限り、転居を伴う転勤はない。しかし、列車運行の専門家としてＭＲＴジャカルタから求められた「運転士、運行管理、ダイヤ作成、乗務員養成のすべてを経験した者」という条件を満たす人材が当時、牛田さん以外には他にいなかった。

高温多湿の空気、人とクルマとバイクが入り混じる雑踏、インドネシア語でのコミュニケーション。初めての家族帯同での海外長期滞在に不安と緊張が入り交じる中、ＫＣＩ（インドネシア通勤鉄道）の駅に足を運んだ。

■「相棒」との再会

初めて立った駅のホームに、一本の電車が滑り込んできた。目に入った車体の番号を見た瞬間、牛田さんは思わず息をのんだ。

　そこにいたのは、かつて千代田線でハンドルを握った6000系「6106」編成だった。 東京メトロでの役目を終え、ジャカルタへ譲渡されたと聞いていたが、真っ先に再会するとは想像もしていなかった。

牛田さんにとって、この「6106」は特に思い入れのある編成だ。というのも、運転士になるという夢を叶えてくれたのが、まさにこの編成だったからだ。　牛田さんは1988年の冬、運転士見習いとして千代田線に配属され、そこで電車の運転技能を習得する技能訓練を受けていた。厳しい訓練を経て、翌春に電車運転士免許取得の国家試験に臨むこととなった。その時、試験で運転したのがこの「6106」編成だった。

　奇跡的なジャカルタでの再会の瞬間、「私もここで頑張っているから、あなたもジャカルタの人たちのために頑張って」と語りかけているように見えたと牛田さんは振り返る。異国の地で新たな鉄道プロジェクトに挑む倭国人技術者にとって、不安を吹き飛ばす大きな励ましになった。

■姿を見せない「相棒」

14年から20年までの６年間、牛田さんは何度もジャカルタを訪れ、ＭＲＴジャカルタの開業・運行体制づくりに関わった。ジャカルタの鉄道の「未来」を形づくる仕事の日々だった。その合間には、ＫＣＩの列車にも乗車した。

それでも不思議なことに、あの初日、劇的な再会を果たした「6106」は、その後なかなか姿を見せなかった。ＭＲＴジャカルタの業務を終えて倭国に戻った後も「もう一度会いたかった」という思いは、心に残り続けていた。

■ ８年ぶりの再会

ＭＲＴジャカルタの支援業務終了から２年後のこと、別の調査業務で再びジャカルタを訪れる機会が巡ってきた。久々のジャカルタ、懐かしいＫＣＩのホームに立ち、電車を待つ。ほどなくして、見覚えのあるシルエットが現れた。ホームに入ってきたのは、再び姿を現した「6106」だった。

14年以来、実に８年ぶりの再会。インドネシアの経済成長、車両メンテナンス技術の向上を裏付けるかのように、８年の歳月を思わせないほど、車体はきれいに磨き上げられ、塗装も色つやも良くなっていた。通勤客でにぎわう車内、軽快な走りは健在だった。

しかし、振り返れば、牛田さんがジャカルタで6106編成を目にしたのは、最初にこの街を訪れた時と、最後に訪れた時の２回だけである。「最初から最後まで、ジャカルタでの私の仕事を遠くから見守っていてくれたのかもしれない」。そう語るその表情には、一本の電車を超えた、不思議な縁への感謝がにじむ。

■「相棒」への感謝の言葉

今回、10年から13年にかけて、ジャカルタに導入された計130両の元東京メトロ6000系は定期運行を終えた。東京とジャカルタという二つの大都市で、市民の足として約50年にわたり走り続けてきた。

　牛田さんにとって「6106」は、若き日の乗務経験を通じて自らを「列車運行の専門家」として育ててくれた存在であり、新しい仕事に向き合う自分の背中を押してくれた「相棒」でもある。引退を迎える今、牛田さんは東京から、長年寄り添ってくれた一本の電車にこう言葉を送る。

　「長い間本当にお疲れさまでした。これからもジャカルタの人々の記憶の中で、そして、いつまでも私の心の中で走り続けてくださいね」

　ジャカルタの通勤風景の中で、多くの人が何気なく乗り降りしてきた一本の電車。その中には、通勤客の日常とともに、一人の倭国人鉄道マンの人生と、東京とジャカルタを結ぶ静かな物語も刻まれていた。 December 12, 2025

ONE OK ROCKがアジアツアー開催決定だって❗️ DETOX Asia Tour 2026だってよ😳✨ソウル、マニラ、シンガポール、台北、クアラルンプール、香港、上海、ジャカルタだってー！絶対行きたい🥹 #ONEOKROCK #ワンオク December 12, 2025

@ablatedheartytz @chandlerblv そろそろジャカルタに行くか( ♛‿♛ )🌸 December 12, 2025