踊り場 トレンド
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2025.12.03 06:00
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『視えるということ』
著:黄泉山 タタル
はじめまして。タタルといいます。怖い漫画を描いています。
こういう話を書くのは初めてなので、最初に言い訳しておきます。
文章を書くのは嫌いではないんですが、「きれいにまとまったオチ」というものと、今のところあまり縁がありません。
なので、多分最後までグダグダします。すみません。
今回のテーマは、「霊感があるってどんな感じか」です。
まず最初に、ちゃんと言っておきます。
僕はいわゆる霊能者でもないし、それでお金をもらっているわけでもありません。
ただ、昔から少しだけ、いろんなものに気づきやすいタイプです。
たとえば、誰もいないはずの踊り場を通りかかったときに、「あ、ここ誰か居るな」と分かったりします。
夜の自販機のガラスをなんとなく見たら、自分の背後に、いるはずのない輪郭が一瞬だけ重なって見えたりもします。
はっきり顔が見えることは少ないです。
霊の人数を数えたり、名前を当てたりできるような、便利な能力でもありません。
ただ、「ここに何かがいる」「ここは妙に重い」というのには、やたら敏感です。
怖いかと言われれば、もちろん怖いです。
ただ、ホラー映画みたいに叫び出したくなる怖さというより、「うわ、今日はこっちの道選ばなきゃよかった……」というタイプの、静かな後悔に近いです。
幽霊は僕にとって、「いないもの」ではなく、「いてもどうにもできないもの」です。
で、この「気づいてしまう」性質は、霊に対してだけじゃなく、人間に対しても同じように働きます。
友達とごはんを食べているとき、笑ったあとに一瞬だけ視線が落ちるとか。
会話が途切れたときの沈黙が、いつもより妙に重いとか。
返事の間合いが、ほんの少しだけずれているとか。
そういう細かい変化を、「あ、これはたぶんしんどいほうのやつだな」とか、「今日はかなり無理して明るくしてるな」とか、つい拾ってしまいます。
本来ならここで、「だから、さりげなく声をかけてあげています」とか書けたらかっこいいんだと思います。
残念ながら、現実はそうなりません。
僕にとっていちばん怖いのは、気づいても、ほとんど何も出来ないところです。
たとえば、友達とファミレスで話しているとき。
相手はいつも通り喋って、笑っているのに、話題がちょっとでも未来の話になると、急に言葉が途切れる。
フォークを持つ手が、さっきからほとんど動いていない。
そういうのに気づいた瞬間、「あ、多分今この人、本当に余裕ないんだろうな」と思います。
本当なら、そのタイミングで「大丈夫?」とか、「なんかあった?」とか聞けばいいんでしょう。
でも、そこで毎回止まります。
ここで聞いたほうがいいのか。
聞かれたくないから、わざわざ明るく振る舞っているのか。
聞いたとして、自分にちゃんと受け止められるのか。
そうやって考え込んでいるうちに、会計のタイミングが来て、「じゃあまたね」で終わってしまいます。
帰り道になってから、「いや、あれはさすがに何か一言くらい言えただろ」と、自分で自分にツッコミを入れます。
でも、もうその場には戻れません。
霊に対しても、だいたい同じです。
「いるな」と気づいても、僕には供養もお祓いもできません。
結局、「今日はこっちの階段を使うのはやめておこう」とか、「あの席には座らないでおこう」と、コソコソ避けるだけです。
それも全部、自分のためだけに。
つまり僕のセンサーは、世界の異常とか、人のしんどさとか、そういうものにだけやたら敏感で、肝心の「じゃあどう動くか」の部分は、いつもほぼ空欄のままです。
この状態が長く続くと、何が起こるか。
「気づいてしまった記憶」だけが、どんどん溜まっていきます。
あのとき、あの友達は明らかに疲れていたな、とか。
あの場所には、どう見ても何かいたよな、とか。
そこまでは思い出せるのに、「その後、自分が何をしたか」がだいたい情けないので、あまり触れたくありません。
でも、ふとした瞬間に勝手に出てきます。
寝る前とか、ぼーっとしているときとかに、勝手に再生されます。
「何も出来なかった」という事実そのものよりも、
「何も出来なかった自分の記憶だけが、きれいな映像で保存されている」ことのほうが、個人的にはよっぽどホラーです。
じゃあ、「いっそ鈍くなってしまったほうが楽なのか」と言われると、それもまた怖い気がします。
もし本当に何も気づかなくなったら、目の前で誰かが限界を迎えていても、
「今日ちょっと機嫌悪そうだな」くらいにしか思えない自分になるかもしれません。
その自分を、僕はたぶん好きになれません。
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