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愛を誓え
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2025.11.28 00:00
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『ふたりのまま』に寄せて。
この映画は、私が娘を授かる際にご支援いただいた「こどまっぷ」の代表・長村さとこさんが制作したドキュメンタリー映画です。同性同士が子どもを授かり、産み、育てていくとはどういうことなのか――。その意味を改めて深く感じさせる、胸の奥底にまで響く作品でした。
静かに流れていく日常の風景の中に、登場する一人ひとりの気持ちがあまりにもリアルに息づいていて、気づけば涙が止まらなくなっていました。
『ふたりのまま』は、同性カップルが「親になる」という決して平坦ではない選択に向き合う姿を、意図的な演出を排したまっすぐな視点で映し出します。生活の中にある何気ない会話や静かな沈黙がそのまま置かれているだけなのに、その一つひとつが生々しく、優しく、時に痛いほど切実です。
言葉にできない幸せだけでなく、もどかしさ、切なさ、ためらい、苛立ち、互いを思い理解しようとする葛藤。
素直に頷けない心、引き返せない不安、それでも前に進もうとする決意――。挙げればきりがないけれど、そのすべての根底に「誰かを深く想う愛」がありました。
そして、そのすべてが私自身の心の奥の“同じ場所”を震わせました。同じLGBTの一員として、彼女たちの気持ちが痛いほど分かる。「あぁ、そうだよね。私も同じ気持ちを抱いた。」そう思う瞬間が何度もあって、また涙がこぼれました。
そして何よりも、この映画に登場する「こどもがほしいから」のお二人が、私が10代の頃に心を大きく揺さぶられたブログの作者であり、実際に子を授かったカップルであるということは、言うまでもありません。
当時の私は、そのお二人に影響され、“性別やセクシュアリティを問わず、誰もが愛を誓える場所をつくりたい”と考えるようになりました。そしてオンライン上に「セクシュアリティを問わないカップルのオンライン婚姻サイト」を立ち上げたのです。
婚姻届を模したフォームに二人で情報を入力し送信すると、後日サイト上に婚姻証明書が掲載される――そんなシンプルな仕組みでした。全国から届く婚姻届を“誓いの署名”として受理し、私が責任をもって“国のしかるべき機関”へ提出する。今思えば大胆で青くて、でも、その分だけ真剣で、心をこめて丁寧に向き合った取り組みでした。
その後、海外に移ったことで志半ばにはなってしまいましたが、「届かないと思った声を、確かに誰かが受け取ってくれた」というあの経験は、何物にも代えがたい宝物です。その原点となった存在と、この映画が、まっすぐ一本の線でつながったように感じた瞬間、胸の奥が熱くなりました。
登場する4組のカップルは、同じ「親になる」というテーマに向き合いながら、それぞれに全く違う“風景”と“葛藤”を抱えています。とはいえ共通しているのは、「ただ大切な人と共に家族をつくりたい」という、至極当たり前で美しい気持ちです。制度的な“壁”、理解されない孤独、言葉の痛み。それでもなお「家族でありたい」と願い続ける姿は、まるで決して離すまいと静かに、固く手をつないでいるようでした。その姿を目にして、何も感じない人がいるのでしょうか。
レズビアンとして子どもを授かり育てる道を歩む私にとって、彼女たちへの共感は決して他人事ではありません。“産む側”と“産まない側”の距離。制度に守られていない心細さ。それでも一緒に前を向く力。そのすべてが自身の経験とも深く重なっていました。しかし、その一方で驚くほどシンプルにも見えます。「愛する人たち=家族」ただ、それだけなんだよと教わったような気がしました。
『ふたりのまま』は、家族とは何か、親であるとはどういうことか。その本質に静かに寄り添いながら、強く優しく問いかけてくれる作品でした。あの日、10代の私の心を強く揺さぶったブログがあったように、この映画もまた、誰かの未来をそっと変える光になるのだと思います。涙を流しながら観た時間は、私自身の“こどもの未来”をやさしく後押ししてくれる、確かな光でした。
そしてただただ静かに。できるだけ早く、願わくば明日にでも。そしてそれが叶わないなら、どうか私たちの子どもが大人になるまでには。どうか、誰の家族も、誰の愛も“特別なもの”や“誰かの承認や理由が必要なもの”じゃなくなりますように。ふたりのまま、それぞれのまま、ありのままの姿で、人を、家族を、胸を張って紹介し、愛せる世の中になりますように。誰も透明人間にならない、そんな世界になりますように。
最後になりましたが、さとこさん。
一人ひとりの“現実”を届けてくださり、本当に、本当にありがとうございました。活動を続けられる中、いいねの数以上に、批判の数も多いことと思いますが、“長村監督”が映し出した“家族のリアル”は、社会がまだ十分に受け止めきれていない領域に確かな問いを投げかけるものでした。優しさだけでも、怒りだけでも作れない、この映画が、多くの人の元に届き、世界の見え方を静かに傾け、だけど確実に塗り替えていくのだと信じています。
心からの感謝、敬意。そしてエールを贈ります。
ありがとうございました。
https://t.co/hGTslRExmR
#ふたりのまま November 11, 2025
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