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B'z「イチブトゼンブ」
完璧を捨てた王者の「正解」
2009年に発表されたこの曲は、B'zのキャリアにおいて「第2の黄金期」を決定づけた一曲です。
それまでの「孤高のハードロック」という鎧を脱ぎ捨て、より普遍的で、かつ残酷なまでに真理を突いたこの曲の深層を紐解きます。

加速するリズムと「剥き出し」の哲学
この曲の最大の特徴は、イントロから鳴り響くタイトで疾走感のあるビートです。
プロデューサーの寺地秀行氏とともに、徹底的に無駄を削ぎ落としたサウンドは、ギターの松本孝弘氏が提唱する「一音の説得力」の極致にあります。

稲葉浩志氏が綴った「愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに」という一節。これは、SNSの普及が始まり「他人の全て」が見えすぎてしまう時代に先駆け、「全てを理解しようとする傲慢さ」への警鐘でした。
100%の理解を諦めることで、たった1%（イチブ）の真実を愛し抜くという逆説的な愛の形は、現代においても聴く者の胸を突きます。

異例の「月9」降臨とドラマーの衝撃
フジテレビ系月9ドラマ『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』の主題歌。
それまでタイアップに媚びない姿勢を見せていたB'zが、ドラマの台本を読み込み、作品の世界観に完璧にアジャストさせたことは、業界に大きな衝撃を与えました。
結果、ドラマと共に「イチブトゼンブ」は社会現象となりました。

この曲の骨太なリズムを支えているのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのドラマー、チャド・スミスです。
松本氏が自らオファーし、LAで録音された彼の「重戦車のようなドラミング」が、J-POPの枠を超えた世界水準のロック・ナンバーへと押し上げました。

色あせない「無敵のアンセム」
2025年現在、B'zはデビュー37周年という驚異的な領域に足を踏み入れています。
2025年夏に開催された「B'z LIVE-GYM 2025」においても、「イチブトゼンブ」はセットリストのクライマックスを飾る定番曲であり続けています。
イントロのギターリフが鳴った瞬間に会場の空気が爆発する光景は、2009年当時よりもさらに熱を帯びていると評されています。

2021年の全曲サブスク解禁以降、Spotify や Apple Music の再生回数は常にトップクラスです。
本日2025年12月17日現在も、「J-ROCKの入門編」として若い世代に最も聴かれているB'zの楽曲であり、時代を超えて「正しい愛の形」を提示し続けています。

「イチブトゼンブ」は、B'zが「倭国のロックの頂点」という立場に甘んじることなく、大衆性と音楽的クオリティを極限まで融合させた、まさに「王者の証明」といえる楽曲です。
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