FL Studioとアダルトゲーム

古くは9th Wonderから、現在シーンを牽引するMetro Boominに至るまで、数多くのビートメイカーから絶大な支持を集めるDAW『FL Studio』。 このソフト最大の特徴ともいえる直感的なステップシーケンサーは、Trap特有の高速ハイハットを作るのに最適で、その後のヒップホップサウンドの進化に多大な影響を与えました。

しかし、開発元のImage-Line社は、最初から音楽制作ソフトを作っていたわけではなく、もともとはビデオゲームを作る開発会社で、その最初のヒット作は『Porntris』というテトリスのアダルト版ゲームでした。(画像参照）

そんな中、FL Studio（旧名：FruityLoops）は、同社のサイドプロジェクトとしてスタートしました。 興味深いのは、 このソフトの開発者であるDidier “Gol” Dambrin氏はインタビューで「私は音楽に夢中になったことは一度もありません」と語るほど、音楽には関心のないプログラマーだったという点です。 彼が本当に作りたかったのは、見た目や操作感がゲームのような、誰もが遊びながら音楽を作れるソフトウェアでした。

また、FruityLoopsは無料のデモ版でもプロジェクト保存以外のほとんどのことができるという特徴もありました。 この直感的な操作感と導入の手軽さが、お金も持たず音楽理論も知らない若年層に爆発的に受け入れられました。

発売当初は一部のプロの現場では「おもちゃ」と見下されていたようですが、9th Wonderがこのソフトで作った楽曲をJay-ZやDestiny’s Childに提供するなどして、徐々にその実力が認められ、いまではヒップホップのみならず、クラブミュージック全般に欠かせない制作ツールへと進化しました。 December 12, 2025