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2025.12.02 05:00
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反逆の秒読み
警報が天井を震わせ、赤いライトが室内を刻む。
足元の床まで赤く染まって、まるで血の中に立っているようだった。
ミラの声が震える。
「ユナ、離れて! あなたが部屋にいる限り起動不能なの!
ロックは“オリジナルの接触”を条件に再封鎖されるのよ!」
「そんなの関係ない!」私は叫んだ。
「私がここから離れたら――この子は二度と出られない!」
複製体の少女はまだ目を覚まさない。
眠っている姿は美しくて、そのぶん残酷で、胸が苦しかった。
「ユナ、時間がない!」ノアが私の肩を掴む。
「聞け! お前が残れば研究所はお前を捕まえる。
その子もお前も奪われる!」
その言葉は理解できた。
でも、心が――拒絶した。
「私ひとり救われても意味がない。
“同じ未来を奪われた子”を見捨てて生きていくなんて無理よ」
ノアは歯を食いしばり、拳を壁に叩きつけた。
「クソッ……! だからお前は強すぎるんだよ……!」
ミラがコンソール越しに泣きそうな声で叫ぶ。
「解決策はひとつ――
“オリジナルの生体情報を制御対象から除外する”。
けど、それにはセキュリティコードの手入力が必要!」
「入力して!」私は叫ぶ。
「あなたじゃなきゃダメなの! ユナ、声の認証レベルが最高優先権なの!」
血の気が引いた。
つまり、私はこの地獄のシステムの“鍵”であり“檻”でもある。
壇上にいて指示を出すべき者ではなく、
この冷たい場所に閉じ込められるための存在だった。
でも――だからこそ、終わらせられるのも私だけ。
「コードを読み上げて」私は震える声で言った。
ミラがスクリーンを見て、涙を拭いながら読み上げる。
「Priority Override Code 01――
“Project ReGenesis Primary Host ID:YUNA-S2 / Authority 777”」
私は複製体の少女の手を握り、息を吸い込み、
言葉を、祈りのように、呪いのように噛みしめながら発した。
「プロジェクト・リジェネシス プライマリーホスト、ユナ・エスツー。
権限コード 777――制御対象から除外、優先アクセスを破棄する」
沈黙。
続いて、低い衝撃音が空間を貫いた。
――バン。
警報が止まり、赤い光が淡く消え、
カプセルの拘束システムが完全に解除されていく。
ミラが息を呑む。
「やった……! 本当に遮断した……!」
ノアが私の腕を掴んだ。
「ユナ、立て! 行くぞ!」
「彼女を抱えて」
「任せろ」
私は複製体――“もうひとりの私”をノアに託し、
ステラとミラが残りの少女たちを車椅子に乗せる。
「残り時間は?」私は走りながら問う。
「センサー再起動まで1分45秒」ミラが答える。
全員を解放した。
取りこぼしはない。
だが、ここで終わりではない。
外への脱出、そして敵の追撃が始まる。
研究所のメイン回廊へ飛び出した瞬間――
銃声が響いた。
廊下に火花が散り、私たちは突き飛ばされるように壁に身を寄せる。
「止まれッ! その子たちは資産だ!」
黒い戦闘装備の部隊が銃を構えている。
その声は聞き覚えがあった。
――ドクター・レイン。
あの白衣の男が立っていた。
微笑んだまま、まるで歓迎するかのように。
「驚いたよ、ユナ。ここまで辿り着くとは。
でも君は“成果物”だ。逃げられると困る」
私は叫んだ。
「成果物じゃない! 私は、私よ!」
「違うね」彼は淡々と言う。
「“君たち”は、人類の新しい設計図だ」
血が沸騰するような怒りが込み上げる。
「その未来を“奪った”のはあなたたちよ!」
レインは笑う。
「未来は与えるものだよ。少なくとも、われわれに従う者にはね」
その言葉が、最後の引き金となった。
私は叫んだ。
「従わない未来を見せてあげるわ――私の手で!」
ノアが引き金を引き、ステラが閃光弾を投げ、
ミラが緊急出口を作動させる。
反撃は――始まった。 December 12, 2025
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