冬の午後、玄関に届いた発泡箱を開けると、陸前高田市の荒木鮮魚店さんからの毛蟹がまだ微かに動いていた。一杯五百グラムを超える堂々たる姿に、思わず息を呑む。金沢に住んでいた頃は、冬になればズワイ蟹を茹でて味わったものだが、今回は思い切って “蒸し” にした。二十五分。
蒸気が抜けた瞬間、ふわりと広がる甘い香り。箸を入れた一口目で、その判断が正しかったことを悟った。蒸すことで旨味がギュッと閉じ込められ、甘味が驚くほど際立つ。 火入れが絶妙な証拠だ。

小出刃でサクサクと殻を落としながら、食べやすく甲羅に盛り付ける作業は、まるで職人の仕事のようで楽しい。鮮やかな身の白と、濃厚な蟹味噌の褐色。甲羅にたっぷり詰め込んで熱燗を傾けると、胸の奥がじんわり温かくなる。

思えば、自宅でこれほどの毛蟹が味わえる時代になった。海の向こうから台所へ直行する贅沢に、ただ“幸せ”と呟くほかない。蒸気と味噌の香り、そして熱燗のぬくもりに身を委ねながら、私はそのささやかな奇跡にしばし浸っていた。 December 12, 2025

明日、陸前高田市で「奇跡の一本松マラソン」が開催されます
当宿では、参加されるお客様向けにマラソン後にご入浴いただけるプランをご用意しています（〜15:00）
現在、2部屋だけ空きがあります
もしまだお宿がお決まりでなければ、ぜひご利用ください
＃岩手　＃陸前高田　＃奇跡の一本松マラソン https://t.co/ftA0aYvKL5 December 12, 2025