生徒会長 トレンド
0post
2025.12.12 04:00
:0% :0% (-/-)
人気のポスト ※表示されているRP数は特定時点のものです
タイの「カイチョー」設定が生まれた裏話
グレイトハートは、実は擬人化する中でいちばん扱いが難しい馬でした。写真も証言も少なく、他の名馬より世代が十年ほど古いこともあります。そして彼が背負った「斤量」と「業」はあまりに重く、物語として描くには覚悟が必要な題材でした。それでも、タイ史上最強と言われながら語り継がれる人が日々減っていくこの馬を、そのまま忘れさせてしまうことは、あの時代に彼に業を負わせた人と同じだと思いました。だからこそ、何とか「キャラ」という形に落とし込む方法を探し続けました。それが現在のマー娘版グレイトハートにつながっています。
史実のグレイトハートはダービーを制した後、主要王室杯を5連勝し、当時青天井だったハンデ制度のもとで「75キロ近い斤量」を背負って散りました。この出来事をきっかけに、タイの斤量制度の見直しが始まります。
彼の悲劇があまり語られない理由は、「偉業があまりに眩しく、悲劇の部分が後ろに追いやられてしまった」ためだと思います。実際、彼の死を「人の過ち」と明確に書いたものは、私の『タイ名馬列伝』くらいしかありません。それほど「史上初の王室杯三連覇」という肩書きは重いものでした。
キャラ化にあたって、私は大きな決断を迫られました。倭国のウマ娘の魅力は、本来競馬ではタブーとされる「もしも」を描けるところにあります。サイレンススズカの復活、ビワハヤヒデとナリタブライアンの再会、アグネスタキオンの栄光。こうした「もしも」が多くの人の心をつかみました。
しかし、タイ競馬の文脈は倭国とは違います。ウマ娘は巨大な倭国競馬文化の中で咲いた花であり、元の物語が広く知られているからこそ「もしも」が輝きます。
タイの場合はそうではありません。私が掘り起こし、私が語り、時には私が作らなければなりません。これはその第一歩であり、この方向性が今後の流れを決定づけると感じていました。そして同時に、誰も正さなかった過ちを正す最後のチャンスでもありました。
そのため、私は絵の中でさえグレイトハートから「走る足」を奪いました。スズカのような遠征の「もしも」は作らず、あえて「未来を閉ざす」選択をしました。その代わりに、名前の通り「強い心」を与えました。
マー娘時空のグレイトハートは、もともと大きな野望を持つ子ではありません。走ることが好きで、みんなが走る姿を見るのも好きな子です。しかし、タイのハンデ制度は「勝てば勝つほど重くなる」青天井で、どれだけ走ることが好きでも「未来が絶たれる斤量」を恐れて勝利を諦める子が多くいました。彼女はそんな世界に「それは間違っている」と叫び続けましたが、大人たちは耳を貸しませんでした。そこで彼女が選んだのは「みんなの代わりに全部を背負う」ことでした。自分が勝ち、自分が背負えば、みんなが全力で走れる。その自己犠牲を原動力に、彼女は史上初のチャックリー杯三連覇を、史上最大斤量で成し遂げます。しかし、その負担はあまりに大きく、ゴール後に倒れ、心肺停止状態に陥ります。
幸い一命を取り留めましたが、もう走れない身体であることを知らされます。寝たきりになってもおかしくない状態でしたが、強い意志で身体を動かし、一年のリハビリを経て復学しました。
戻ってきたとき、仲の良かった友人の多くはもういませんでした。残っていたのは「最強の足を失った車椅子のマー娘」である自分だけです。それでも後輩たちの強い後押しを受けて生徒会長となり、ついにレース運営に意見できる立場になりました。そして自身の経験を根拠に斤量制度の改定を成し遂げ、多くの後輩たちの未来を守りました。
私は彼に「ただ強い馬」である以上のものを望みました。彼の死が無意味ではなかったという証明を、物語を通して与えたかったのです。
マー娘版グレイトハートには、その願いが込められています。ある意味では本当の「もしも」の世界です。現実で足を失った馬には、生き残る選択肢はありません。しかし、人の姿にした以上、ただ可愛いだけでは終わらせたくありませんでした。馬としては描けなかった未来を託し、「足がなくても心で走れる」という人型の特権を贈ったつもりです。
結局これも私のエゴなのかもしれません。でも、そのエゴがなければ、こうした活動を続けることはできなかっただろうとも思います。 December 12, 2025
<ポストの表示について>
本サイトではXの利用規約に沿ってポストを表示させていただいております。ポストの非表示を希望される方はこちらのお問い合わせフォームまでご連絡下さい。こちらのデータはAPIでも販売しております。



