タイタニックの映画を見た観客は、このミュージカルでも「ロマンス」「華やかな社交シーン」などを期待します
それを逆手にとり、主人公をあえて置かずに乗客乗員みんなの物語に仕立てあげます

誰もが沈没という事実は知っています
期待に満ちた出港シーン、叶えたい夢などを見せられますが観客だけが彼らの運命を知っているので胸が痛むのです

そして、残酷なほどの階級による差、本来なら救えたはずの命（氷山の警告の無視、速度の加速など要因が重なり起こってしまった）を目の当たりにします
例えば、階級社会が厳格でなければ、きっと3等客はアメリカに行こうとも思わなかったでしょう
無責任にもアメリカン・ドリームが誇張され広まり、職業を自由に手に入れられる国、万能な理想郷と信じてしまったのです

事故は月のない夜、真夜中に起きてしまった（暗さが氷山の影に気づけなかった大きな理由、真夜中で助けを無線で求めても応答なし）
これらは運であり、どうにもできません
しかし救命ボートを人数分用意する、警告を受け取ったあと速度を落とすということはできたはずです

飛行機墜落事故、原発事故、自然災害
これらは普段からの準備で確率を最小限にできますし、起きてしまってからもトップの判断や対応で犠牲者は減らせます

そういった社会のあり方、事故から何を教訓とするかについて鋭く問うのがこのミュージカルだと感じました December 12, 2025